2013年2月11日月曜日

おたくとOtakuと道楽と夏目漱石

【All About News Dig】連動エントリー
20~40代男性の過半数、「自分はオタクだと思う」
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1301/23/news068.html
各研究所がその規模を調査するなど、消費不況の中で注目されているオタク市場。20~40代の男性のうち、過半数は自分がオタクだと認識しているようだ。ハピネット調べ。

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「エッー!?」

以前からネットなどで「国民総オタク化」などの文言を目にはしていましたが、この見出しにはあれこれビックリしたので、まずは気を落ち着けるために「オタク」を辞書でひいてみました。

辞書に見る「おたく」とその語源
「俗に,特定の分野・物事を好み,関連品または関連情報の収集を積極的に行う人。狭義には,アニメーション・テレビ-ゲーム・アイドルなどのような,やや虚構性の高い世界観を好む人をさす。 「漫画 ─ 」 〔  は多く「オタク」と書き,代名詞としてこの語を使う人が多いことからの命名という。1980年代中ごろから使われる語〕」(大辞林第三版/三省堂)

大辞林上で「おたく」に上記の意味が付与されたのは、1995年発行の第二版からだと言われています。この2年前に三省堂から発行された「辞林21」での「おたく」にこの意味は掲載されていません。ちなみに大辞林さんは「萌え」なども採用している、先進的な辞書ですが、一部で「大辞林に載っている」と話題になった「ぼっち」「ツンデレ」などは、まだWeb版やアプリ版のみで、紙の辞書には採用されていません。紙の辞書に採用されるには、(意味が定着したとみなされるまで)一定の期間が必要です。

脱線してしまいました。僕が今回の調査で気になったのは「おたく」という言葉を調査対象の方々がどう捉えたか。少し前(2005年)に、「おたく」という言葉の成り立ちを、編集家の竹熊健太郎さんがブログにまとめてらっしゃいました。超ざくっと紹介させていただくと1983年、コラムニストの中森明夫さんが「おたく」を揶揄するような調子でフレーム化した概念が、1989年に起きた幼女誘拐連続殺人事件の容疑者の属性を指す言葉としてメディアに浮上したというものです。
※1983年以前から近いニュアンスで使われていたという話もありますが、詳しくは以下、竹熊さんのエントリーからどうぞ。
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/03/post_10.html
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/03/post_11.html

「おたく」概念の変化
メディアから光を当てられた「おたく」という概念は、その後「自己評価」←→「他者からの見方」が明確に切り分けられていきました。情報を深堀りし、知見を突き詰めようとする「おたく」自身が考える「あるべき姿」と、メディアを中心とした「世間」からの見方──ネガティブ感を伴うレッテルです。1990年代前半には、両者の間には互いを意識しつつも明確な境界が存在していましたが、1990年代半ば以降その境界が溶けていったというか、互いが互いの概念に明確に干渉するようになっていった。このあたりの流れについては、社会学者の宮台真司さんが折りにふれ著書などで言及していらっしゃいます。
http://www.miyadai.com/index.php?itemid=416

海外でも「Otaku」という言葉が定着するようになった2000年代には、さらなるニュアンスの変化が現れます。時代の変化に伴い「おたく」「オタク」「ヲタク」という呼称からは、ポジティブな香りまで漂いはじめました。もはや「御宅」ではなく、社会/世界での立ち位置までも獲得した「おたく/Otaku」という呼称は、今後、何を指す言葉になっていくのでしょうか。「Tokyo Otaku Mode」(https://www.facebook.com/tokyootakumode )の快進撃を見るにつけ、「おたく/Otaku」から目が離せなくなります。

夏目漱石の解釈する「道楽」は「おたく」なのか。
1992年頃、友人との雑談の席で「●●オタクとか☓☓マニアって呼び方は、語感が楽しくないから『道楽』って言い換えようぜ」という話題になったことがあります。当時は「おお! 『道楽』なら楽しそうだ」と軽はずみに思ったりもしましたが、その後夏目漱石の「道楽と職業」を読んで、愕然としました。

「禅僧の修行などと云うものも極端な自然本位の道楽生活であります。(中略)すべてをなげうって坐禅の工夫をします」

うわぁ……。これじゃ「道楽」も常人には難しい。しかもそもそも仏教用語で「道楽(どうぎょう)」は、仏道を求めるという意味なんだとか。確かにテレビなどで拝見するコアな「アイドルおたく」の言動などは、「すべてをなげうって」いるようにも……。ともあれ「道楽」も「おたく」も、そもそもの用法では常人には到達し得ない高みのようです。
http://www.otani.ac.jp/yomu_page/b_yougo/nab3mq0000000qyf.html

現代における「おたく」の一般的解釈って?
というわけで、冒頭の「あなたは自分をヲタクだと思いますか」という設問。自分自身を振り返ってみると、マンガは好きですが、単なるマンガ好きだと思っているので、「ヲタクではないと思う」を選択させていただこうと思います。全体の45.7%という少数派なのは寂しいところですが。

ところでこの調査のプレスリリース原文での「おたく」の定義は「※おたく(オタク、ヲタク)とは、サブカルチャーファンの総称。元来、アニメファンを指す呼称が、現在、広い領域のファンを表すため、アニメファンは「アニメヲタク」(アニヲタ)と一般的に呼称されている。」となっていました。

あれ? 単に「ファン」だと解釈するなら僕も「おたく」ということに……。他意のない素朴な疑問ですが、いま一般的に言う「おたく」とはこういう解釈なんでしょうか。

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