2014年10月12日日曜日

「西俗東漸」がGoogle先生で引っかからない件。

Google先生、万能だと思っておりましたが、当たり前の話ながらその国に残された文字文化が上限です。編集者としては、新しい情報も追っかける方にどうしても軸足を置く必要はありますが、アクティビストwとしては現場で起きていることにも触れなきゃいけないし、ライターとしては深堀りもしなきゃなりません。

なぜそんなことを思ったかというと、明治期の資料などをひっくり返していて、『明治事物起源』という明治なんでも辞典的な本を読み込んでいたら、「半熟卵を食ふ習俗」という項目に「西俗東漸」という四字熟語が出てきて「ん?」とつっかえてしまったわけです。

その記述としては
「嘉永三年十二月の條に、『異人雉卵のゆてたると、パンをくれし故に、其玉子を取り食せんとすれば皆なまゆでなり。されども、しかいふも遠慮しにて各食しぬ。鶏卵は黄みのこらぬ程なるかよろしといふことを後にて覚えたり』叉元治元年横濱沖なる軍艦内に雇はれし者の日記に、『朝食、牛の乳一合程温め飲、あとにて鶏卵をゆで黄身の固まらざる、どろどろなるを好む、固まりたるは食べす』とあり。わか國人、今日半熟卵を食ふ習俗は、疑ひもなく西俗東漸なり。」

要は「ゆで卵を半熟で食べるのは、そもそも毛唐の習慣である」と。「西俗東漸」とは「西洋では昔から当たり前のことだったが、東洋(というか日本)では最近になってようやく浸透してきたこと。やっぱり西洋は進んでるなあ」とかそんな意味なのでしょうが、調べてみたところまったく引っかからない。引っかかるのは大陸方面の漢字Webばかり。

確かに超分厚い資料の一節ですから、上がっていなくても不思議じゃないんですが、バイラルメディアだまとめサイトだと、もはや調べ物のノイズにしかならないウェブが超大量に生産されているのに、明治期の資料としては引用されやすい本の一節が検索に引っかからないと、中川淳一郎の「ウェブはバカと暇人のもの」が描いた未来以上にバカと暇人向けのコンテンツが生産されているじゃないかという寂しい気持ちになるわけで、バイラルメディア各位には国威発揚、国力向上のために一刻も早く見切りをつけていただいて、ひたすら過去の資料をまとめるレトロアクティブメディアとかできないかしら。

少なくとも現状では、頼りになるのはGoogle先生単体よりも、Google先生含めて広範囲に調べた資料&フィールドワークの積み重ねで仮説を構築→事実を検証、という本来ごくごく当たり前のことをお若い方にお伝えしたいのですが、その前にまずGoogle先生で広範囲を調べる習慣をぜひつけていただいたり、情報の読み方をクリティカルリーディング等で学んでいただいたり、その前にまずは新聞などネット以外の情報に触れていただいたりしたいところです。10代のPC利用率が落ちるとネトウヨが増えて鬱陶しいことになるに違いないので、なんとかならないものでしょうか。ところで「メッツゲライ(metzgerei)の語源、どなたかご存じありませんか。シャルキュトリーは「肉+加熱」で間違いなさそうなんですが。