2016年5月17日火曜日

帰ってきた"Nose To Tail"! 日本人の知らなかった和牛へのアプローチ

始まりましたよ。ニューヨーク グリルの年に一度の牛祭りが! 昨日、16日から新宿「パーク ハイアット 東京」の「ニューヨーク グリル」で「牛一頭まるごとおいしく食べ尽くす」というコンセプトのフェア「ノーズ トゥ テール」が始まったわけですが、相変わらずアルゼンチン出身のフェデリコ・ハインツマン総料理長の肉料理の発想がキレッキレでございました。

去年の第一弾のテーマは"フレッシュ&シーズナル"。いわば「鮮と旬」。日本料理の根幹となるテーマで和牛をお取り扱い。第二弾となる、今年のテーマは「スモーク&キュア」。意訳すると「燻製とマリネ」といったところ。今年の「ノーズ トゥ テール」の品書きは以下のとおり。ちなみにそれぞれワインとのペアリングも楽しめるセットとなっておりました。

1.牛タンのサラダとグリーンピース
赤玉葱と胡瓜のピクルス ひよこ豆

2.牛ハツのパストラミ 黄身の味噌マリネ
ピーナッツソースとスモークバター

3.黒毛和牛のブリスケットBBQソース
人参キノアのリゾット サンモールチーズ

4.バーボンでマリネした黒毛和牛フランクステーキ スイートガーリック
パタゴニアソルトとスモークしたセロリアックピューレ トリュフソース

5."パンケケ"キャラメルクリーム
ビターチョコレートアイスクリームとカカオクランブル


まずは前菜。「牛タンのサラダとグリーンピース 赤玉葱と胡瓜のピクルス ひよこ豆」
















「ニューヨークグリルだから、NYテイストを盛り込みたい」とフェデリコが望んで盛り込まれた前菜。70℃台前半の火入れは難しい。たいていの肉好きは浅い火入れを好むけど、肉を食べこんだマニアたちは浅いだけの火入れよりも焼きこんだ味を好んだりもする。この牛タンは煮込みのようなやわらかさはないが、火は通っている。黒毛和牛のタンの新しい側面を見ることができる。牛タンなのに食べるとお腹がすくとはこれいかに。合わせるワインはメルヴィル エステート シャルドネ サンタ・リタ・ヒルズ。


牛ハツのパストラミ 黄身の味噌マリネ ピーナッツソースとスモークバター
















「アルゼンチンではハツのグリルにピーナッツソースを合わせるのは定番」とフェデリコは言うものの日本人にとっては目新しい組み合わせ。脂肪の少ない牛ハツにナッツの濃醇なコクは確かに合う(これは使える……)。パストラミは24時間、塩、砂糖、酢などでマリネしたあと、65℃のオーブンで3.5時間加熱したものを冷却。「黄身の味噌がけ」は味噌、酒、みりんといった和の調味料+オリーブオイル。皿の上の時点でマリアージュ。メルヴィル エステート ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズの少し粗野な味が獣肉×ナッツと好相性。


黒毛和牛のブリスケットBBQソース 人参キノアのリゾット サンモールチーズ
















ブリスケットは、海外ではBBQなどでよく使われる部位。日本では「肩バラ」と言われるが、比較的硬いのでレシピや用途に工夫が必要。以前、dressingの連載で湘南のBBQハウスで供される10時間焼きを紹介したが、NYグリルでも塩、砂糖で72時間マリネ→4~6時間スモーク→65℃のオーブンで加熱(時間聞きそびれた)と手間と時間をかけた超希少な一皿に。そもそも日本ではブリスケットを長時間かけて調理すること自体が珍しい上に、和牛にこの手法を使った皿は本当に珍しい。NYグリルとはいえ、さすがにレギュラーで出すには手が掛かりそう。噛みこむと肉の繊維がじわじわとほどけ、奥から確かに和牛の底深いうま味がしみ出してくる。永遠に噛んでいたいと思い始める頃、肉の繊維が消滅するたいへん意地悪な設計。ぐぬぬ。フェアならではの一皿。


バーボンでマリネした黒毛和牛フランクステーキ スイートガーリック
パタゴニアソルトとスモークしたセロリアックピューレ トリュフソース


















「フランク」はアメリカではよくステーキに使われる部位。日本では「ササミ」「ササニク」と呼ばれ、焼肉店で薄切りの「カルビ」として見かけることのほうが多い。でも適度な噛みごたえと多少の脂もあるから、とてもステーキに向いていると思う。日本ではサーロインばかりが珍重される傾向があるけど、こういう部位にも付加価値がつくといいなあ。ブラウンシュガー、塩、バーボンで24時間マリネしたものをステーキに。世界一古い(300万年前の層だそうな)パタゴニアソルトのほか、熟成ニンニクのスイートガーリックピュレなどで。




フェデリコの焼きは、いつも本当にお見事。日本では肉の内部をレアに仕上げることが多いが、このくらい追い込んだ火入れのほうが味のノリが一段深くなる。

【その他フェデリコメモ】
・今年2月に3週間アルゼンチンに帰国したら6kg太って東京に戻ってきたらしい。

・「アルゼンチン人は、年間50kg以上牛肉食うんだぜ」「人口よりも牛のほうが多いんだぜ」というアルゼンチン牛自慢は健在。

・あ、あと、たまごサンドが大好きで先日、某専門誌のサンドイッチ特集にお声がかからなかったことにたいへんしょんぼりされていたそうなので、今度何かあったらぜひお声がけを。どうやらコンビニのたまごサンドにまで精通しているという噂。






そして最後のデザートは
"パンケケ"キャラメルクリーム ビターチョコレートアイスクリームとカカオクランブル
















パンケケは南米のクレープ(みたいなもの)。砂糖がけしたあとキャラメリゼさせた香ばしさと、80%カカオのビターチョコレートアイスクリームのほろ苦さと、カカオクランブルの食感が楽しい。きちんとしたデザート×エスプレッソの〆は、やっぱり食事がグッと締まるよなあ。ごちそうさまでした。

あれ? そういえば、ワインはもう一種類あったような気がするけど、ついつい楽しく呑んでしまったので、詳細は現地にてご確認を。そしてたいへん重要なお話ですが、「ノーズ トゥ テール」は昨日16日(月)に始まりましたが、23日(月)までの1週間限定のフェアでありますので、大至急パーク ハイアット 東京のニューヨーク グリルまでお問い合わせを。ディナーコース20,000円で以下の夜景もついてきます(もちろん、食事のあとは同フロアのバーへの移動も可能)。詳細はこちら(http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000012816.html)でどうぞ。