2014年4月21日月曜日

長野の「粉モン消費日本一奪回」について、ご説明申し上げます。

や、とくにどこかからツッコミが入ったとかそういうわけじゃないんですが、一応ご説明を申し上げておきます。先日こんな原稿をNEWSポストセブンさんに書きました。
>長野が3年ぶりに「小麦粉消費日本一」 強豪・奈良を振り切る
http://www.news-postseven.com/archives/20140420_252203.html

という原稿のお話です。

この原稿を書くために調べ物をしていたところ、日本経済新聞に少し前にこんな生地……もとい記事が掲載されていたことを知りました。WEB版に掲載されていた大阪社会部の記者さんの記事なので、もしかすると全国版には載っていなかったのかもしれませんが。

>小麦粉購入、奈良トップに 専業主婦のパン作りで? 
>ベッドタウンでホームベーカリー販売好調

http://www.nikkei.com/article/DGXNASIH2500G_W4A320C1AA1P00/

こちらでは「奈良がトップに」となっています。僕の記事では「長野がトップ奪回」。どちらかが間違っているというわけではありません。単純に総務省の調査から抜き出しているデータが違うというだけのお話です。僕は「総世帯」の数字を抽出し、日経の記者さんは「二人以上の世帯」を抽出しています。

大手メディアでは「二人以上の世帯」に限定したデータ抽出をする記事が目立ちますが、僕は、あるコミュニティ全体の現状をくくる原稿のときにはできるだけ「総世帯」を採用するようにしています(理由は後述します)。
何かの企画に「総世帯」と「二人以上の世帯」を引用するのには、それぞれメリット・デメリットがあります。そもそも日本の家計調査は終戦直後の1946年にスタートした「消費者価格調査」から発展したもので、「都市に居住する単身世帯を除く非農林漁家世帯」を対象に毎年調査が行われてきました。
「二人以上の世帯」の数字だとこの蓄積データが使えます。家計調査は費目分類などしばしば変更がなされ、厳密にはどこまで信頼のおける比較データなのかがわかりづらい面はありますが、「同じ母集団」との比較が手法としては可能になります。
総務省統計局に電話してみたところ、やはり「二人以上の世帯だと過去との比較ができる」「総世帯だと(単純に人数が少ない分、世帯支出が減るので)平均の数字が小さくなる」のが一番の違いのよう。現在の調査対象は二人以上→約8000、単独世帯→1000──。ざっくり言うと、この比率を現在の二人以上:単独世帯の比率である75:25に当てはめて加工しているということのようです。
企業のマーケティングや対象を限定しての企画なら「二人以上の世帯」の調査も必要でしょうが、僕の感覚としては、地域全体をくくるような企画や世相を読み解く企画で「二人以上の世帯」に限定するのにはどうにも違和感があります。
加えて今回の日経さんの記事は、個人的には苦手なタイプの原稿でした。記者の仮説を実証するためのロジックに見えるのもそうですが、本来ランキング的な企画で、個人のオピニオンが入る余地は総括くらいでしょう。それも媒体の意見として言えるくらいのロジックの積み重ねと説得力が必要です。
なのに、冒頭からツッコミどころ満載で、「奇妙なことに気付いた」(特に「奇妙」ではない)、「調味料入り小麦粉は別項目で集計しており、関西特有の“粉モン”好きとは直接関係なさそうだ」(小麦粉から作る家庭はいくらでもある)と一人語り感満点。
さらには「考えあぐねていると」「興味深い事実に気付いた」「担当者は「聞いたことないなあ」とつぶやいていたが、数日後、驚いた口ぶりで返事が返ってきた」、(大学教授に仮説をぶつけた反応を)「面白い。確かにその通りですね」と書く。社員記者がこういう自己礼賛型の原稿を書くのってありなんでしたっけ。

ああ、でもときおり新聞社の社説に……(以下略