2013年9月1日日曜日

食べログの功罪

久しぶりになんの手がかりもなく、ひとりでふらっとラーメン屋に入った。腹が減って、街に出たものの、目当ての店は土曜は日中のみ営業。近隣にある店は、一見で行くにはハードルがたかそうな店ばかりだった。よさそうな中華屋は土曜の晩に、単身向けのセットなどあるわけもない。きれいで新しいホルモン屋は、それゆえかえって一人では入りにくい。だいたい、今週何回肉を食べてるんだ。そういえば、昨日もホルモンだった。

そこで目についたラーメン屋に「えいっ」と入ってみた。外観は微妙。きれいでも汚くもなく、個人のようなチェーンのようなたたずまいだった。決め手になったのは、近隣の他の店舗はだいたい食べたことがあったのと、「ハーフセット」の充実ぶりが素晴らしかったからだ。

たいていの店の「ハーフセット」は「ラーメンと半チャーハン」とか「半ラーメンとチャーハン」みたいなものだが、ここのハーフセットは「ラーメンハーフ+チャーシュー丼ハーフ+餃子ハーフ+小鉢」で750円。店主にお願いしたところ、チャーシュー丼からごはんを抜いてつまみにしてくれた。今日の小鉢はもやしのナムル風。ビールにうってつけのセットのできあがりだ。

注文すると、すぐさま店主自ら瓶ビールと小鉢を出してくれた。もやしをつまみながらビールに口をつける。いい塩梅だ。なんだか孤独のグルメっぽい。次に、つまみチャーシューがやってくるはずだった。しかし、おそらく新人と思われる大陸系のバイト嬢が普通にチャーシュー・オン・ザ・ライスを持ってきた。

違う違う。そうじゃない。僕は、糖質制限ダイエット中である。幸い店主が気付いてくれて、「すみません。すみません」と平謝りしながら、特厚のおつまみチャーシューにしてくれた。肩ロースの煮込みチャーシューとろんとろん。ああ、ビールが進む。店主の「ラーメン、作っちゃっても大丈夫ですか?」との問いにも、お大臣気分でGOサインを出す。ラーメンもうまい。喜多方っぽい多加水麺でもちもちしている。あっさりしたスープも好みだ。やー、いい店じゃないか。

しかし、ラーメンを半分くらい平らげたところで、バイトが僕の横に伝票を置いた。あれ? まだ餃子出てないよ。あ、でもすぐ出るのかな。そうだよな。ラーメンをつまみにビールをゴクリを3往復ほど。うまい。しかし餃子は来ない。困った。とても困った。

餃子が来ないことにも、確かに困っていたのだが、実は本当に困っていたのは二つ隣の席で、とっくに食べ終わった黒いシャツをお召しになった方がスマホをイジっていることだった。

実はこの店のハーフセットの充実ぶりに気付いたきっかけは、カウンターの先客であるこの黒シャツさんだった。最初に店を探して街を徘徊していたら、黒いシャツを着た方が店頭でメニューをねめつけるように見つめていた。その後、すっと店頭から離れて何やらスマホをいじり始めていた。僕はその光景を横目に、違う店を目指したが、結局振られ、来た道を戻ってそのラーメン屋に入ったのだ。

しかし、餃子が供される前に伝票が出てきたタイミングで、気がついた。そうだ。あの方はきっと食べログユーザーだ。入店前にいったん、店頭を離れてiPhoneをイジっていたのは、食べログで点数をチェックしていたからに違いない。いかん、あの方たちはサービスにうるさい敏感だ。街のラーメン屋だろうと単価が安い店だろうと、バカみたいにサービスや気遣いを求めてくるご自身の尺度にしたがってご判断される。

大変だ。仮にレビュアーさんだったらどうしよう。さっき注文を間違えたのは僕のせいだ。「ハーフセット、チャーシュー丼をごはん抜きのつまみで」という、ややこしい注文をしたからだ。しかし、レビュアーさんだとしたら、そうした店の細かいミスにも気づいているはずだ。

ううっ。餃子が食べたい。どうしても食べたい。しかし黒シャツさんが店を出る気配はない。なんだ。こいつは。酒も飲まずにずっとiPhoneをいじっているじゃないか。まさかレビュアーさんなのか。書き込んでいるのか。うう。何を書いているんだろう。もしかして、僕がいま「餃子が出ていない」ともう一度店側のミスを指摘したら、何かネガティブなことを書いたりするんじゃないか。そんなの寝覚めが悪いじゃないか。一度考え始めると、妄想がどこまでも展開していく。

もはや妄想すること自体がつらいので、餃子をあきらめて先に店を出ようかとも考えた。だがやはり餃子も食べたい。本来なら普通に出てくるはずの餃子(3コ)だ。しかし、餃子を出せなどと言ったら、先ほどのチャーシュー丼の間違え方からして、ハーフどころか一人前の餃子をサービスで出してくるかもしれない。でもそんなには食えない。しかし先に「ハーフでいいですよ」と念を押すのもおかしな話だ。1ブロックで逆接を4回も使って、お恥ずかしい限りだが、それくらい逡巡していたとご解釈いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

何もなければ「ハーフ餃子来てない」と言えばいい。だが隣にいるのは食べログユーザーさんだ(たぶん)。別に食べログが悪いわけじゃないけど、食べログユーザーさんだ。あちこちの店主が歯切れの悪い口ぶりで「ありがたいんですけどね……」と言うレビュアーさんかもしれない。

そこではたと気がついた。もしやいまジューッと音を立てているのは、僕の餃子か。そうか。そうに違いない。あまりの空腹に気がはやっていたに違いない。ならば、すべては濡れ衣だ。お店よ、食べログよ、黒シャツさんよ。ごめんなさい。

そう思った瞬間、ようやく黒シャツさんがようやく席を立った。よし、もう餃子も焼きあがったようだ。ビールもなくなった。この餃子3コでビールをもう一本飲もう。餃子を載せた皿が数皿、トレイにのせられた。ホッとしながら、入り口近くで会計をする黒シャツさんをそっとお見送りする。なんだか食べログっぽい画面がスマホに表示されている気もするが、あまりジロジロ見るのも行儀が悪いので、フロアの方に目を向けた。

バイト嬢がトレイを持って僕のほうに向かってくる。よし、ビールを注文だ……! と意気込んだ瞬間、彼女が何か言おうとしている。そうかそうか。焦るな。まずは「お待たせしました」と言われよう。その後に「ビール1本」と言えばいいだけの話だ。さあ来い。餃子め。なんだかスローモーションに見える彼女が口を開いた。

「お下げしてもよろしいですか」。

えっ……。見るとトレーの上にあった餃子はない。店内奥の客に供されたようだ。目の前の皿が次々を下げられていく。黙って立ち上がり、僕はレジへと会計に向かった。店主が何のてらいもなく「750円です」と言う。ビール代が入っていない。もしや「餃子の分を引いてくれたのか」とも思ったが、それなら一言何か言うはずだ。一瞬、「行って来い、かな」とも思ったが、それじゃあ気持ちが落ち着かない。

「ビールもいただいてますよね」と告げた僕に店主はこう言った。

「ビールは生ですか、瓶ですか」

えっと……。そこからですか。

*********************

なんのことはない。注文を覚えられない料理店の話だ。食べログの功罪というよりも、気の小さい僕が妄想し過ぎなのだろう。

でも食べログ以前なら、普通に「ハーフ餃子、出してもらっていいですか」と告げていたはずだ。隣にいる客がどんな客だろうと、そこまでは気にしなかった。以前エキサイトレビューにも書いたように、一部ではあるが、世の中には「俺がレビューを書いたから、あそこの店は繁盛し始めた」というレビュアーさんもいらっしゃる。

飲食店の店主から食べログのレビュアーについてのグチも散々聞いてきた。はっきり言う。とても評判の悪い人が結構な数でいらっしゃる。本人にそうは告げていなくとも、ハンドルネーム名指しで「迷惑だから、あの人にはきてほしくない」と言った店主もいる。

「写真を許可された」といっても、程度というものがある。のべつ幕なしに撮りまくって、「迷惑なら言えばいい」だなんてどれだけ上から目線なのか。好みの味じゃないからといって「食べられたものではない」と書く人は、よく食べ物好きを気取れるなあ。おなかでもこわせばいいのに。

そういえば、「客のため」とレバ刺しをこっそり闇で出していた店も、このところまた保健所の締めつけが厳しくなり、裏メニューからも外す店が増えてきた。保健所だって、食べログなどはチェックしている。店に無断で写真を撮り、「レバ刺しなう」などと、友人相手の優越感に浸った投稿は自分の知らない誰かに見られている。保健所は、法律にしたがって粛々と取り締まるのがお仕事。客は好きな店の空気くらいは読むのがお作法だ。

一部の人の密かな楽しみを食べログ(のレビュアー)が世間に喧伝することで、うまいものが駆逐され、店内も「撮影禁止」になっていく。ああ、まったくもって窮屈だ。このところ、すっかり日常のネタと化したバカッター画像よりも、「レバ刺しなう」などとソーシャルに書き込むほうが遥かに悪質だということをご理解いただきたく、本日も原稿をお待ちしたり、お待たせしたりしております。

2013年8月20日火曜日

銀シャリ屋げこ亭のめし炊き仙人引退報道(誤報)のメカニズム(仮説)

銀シャリ屋げこ亭ご主人引退誤報の件、Allabout News Digの「最低賃金14円UP!」テーマに強引にまぎれこませましたが、やっぱり、一部から「わかりにくい」とお叱りをいただきました。というわけで、ゲコ亭の部分のみ、再構成してUPしておきます。
※めし炊き仙人村嶋さんご本人とお話した以外の周辺部分はウラがとれているわけではないので、あくまでBlogとしてお楽しみください。

大阪に「銀シャリ屋ゲコ亭」という定食屋さんがあります。「めし炊き仙人」と言われる82歳のご店主が50年間炊事場に立つ、全国に名を轟かせるお店です。でも、例年6月から8月は「水がよくないから」とまるっとお休みされます。

以前、取材で関わったときに聞いた話では、現在の年間売上は5000万円。うち6割以上を材料費にかけ、人件費と経費で2割。残り1~2割が利益でそこから税金を支払うという、もう飲食業界の常識からは考えられないビジネスモデルです。ご自身も「アホくさい商売でしょう」と笑い飛ばしていらっしゃいました。
数日前、全国紙の地方版に「大阪・堺の食堂 めし炊き仙人引退」という記事が流れ、ヤフーニュースが拾ったことで、ネット界隈でも食いしん坊を中心に結構な騒ぎになりました。当たり前です。地元の記者さんや周辺の飲食チェーンの方々がどの程度のご認識かわかりませんが、恐らく地元の方々が想像する以上に全国にファンの多い、伝説のお店です。

第一報は明らかに誤報です。20日現在、読売のサイトに複数のバージョンが上がっておりますが、いまだにタイトルが「大阪・堺の食堂「飯炊き仙人」今月末で引退」という言い切りバージョンも上がっております。

8月14日記事の魚拓(Yahoo! News配信版)
同記事の修正版

第一報がUPされ、ヤフーなどが巡回したあと、本体は修正がされたようです。主な修正点は最後に1ブロック、付け加えられていること。文末に「9月以降に経営を引き継ぐが、(中略)村嶋さんもしばらくはかまどの前に立つつもりだ」というブロックが足されています。「9月以降」というのは、そりゃそうでしょう。いつかは誰かが経営を引き継ぎます。「しばらくはかまどの前に立つ」もご本人がやる気満々です。引退なんてどこ吹く風。

ところが修正版でも、1ブロック目の文末は「今月末で引退」のまま。今年も例年通り、8月はお休みのゲコ亭において星一徹もビックリの魔送球です。タイトルが変更されていないのはレギュレーション的に何かあるのでしょうか。

それにしても報道から数日間、みなさんがなぜ誤報に気づかなかったかというと、「今月末で引退」を真に受けて「例年だと8月は休むはずだけど、今年はラストイヤーだから特別に営業してるってことかな」と勝手に解釈したり、報道を受けて飛び込みで食べに行けどもお休みで「きっと通常とは営業日が違うんだ」と思い込んでいたことが理由だと思われます。

僕は東京在住なので行って閉まっていたら痛すぎます。「とにかく営業日聞かないと」「いざとなったら深夜バス」なんてことを考えて、先週からヒマを見つけては電話をかけていたところ、昨日ようやく電話がつながりました。

んで、ご本人の口から「やー。全国からご心配いただきまして」「今年は米の生育が遅いので、9月頭よりちょっと遅め……中旬から営業する予定ですわ」「ササニシキはたぶん10月に入ってからなのでその頃いらっしゃるといいですな」「やー、まだまだやりまっせ」「がっはっは」という、あの報道はなんだったのか的な応対にこっちが拍子抜けというか、ともあれよかったよかったというわけで。

それにしてもなぜあんな報道が出たか。ちょっぴりあさっての方向に話は飛びますが、ヒントは後継の企業さんのプレスリリースにありました。
2013.08.13 日本一の飯炊き仙人「銀シャリ屋ゲコ亭」を継承します(PDF)

読売のWebが「引退」を報じたのが翌14日の朝8時台。逆算すると本記事は13日の夕刊か14日の朝刊に掲載された可能性が高く、ブーストかかりまくったプレスリリースを目にしたか、耳にした内輪話を仙人に当てずに書いちゃったとか、そんな感じかと思われます。

もっとも、この数年ゲコ亭の店内には「銀シャリ屋げこ亭の50年の味伝授します 御相談下さい あるじ」という貼り紙が掲出されていました。後継探しに苦労されていたというお話も伺っていたので、ゆくゆくは先のプレスリリースの企業さんがお引き受けになる道筋がついたとかそういう話なのでしょうが、プレスリリースはもう少し上手に打たれることをおすすめします。

ご本人がいますぐ引退するおつもりもないのに、「2代目主人を☓☓☓☓(社長の名前)が継承します」とリリースのタイトルに打たれて、仙人のファンから反感を買ったりしないでしょうか。炊事場を開襟シャツ&スーツで闊歩するお写真がありましたが、この格好で米は研げるのか、スーツは汚れないのかなどあれこれ心配です。

文章にも「この数か月間は準備期間として、事前に当社の社員が店舗に入り込み」って盗っ人じゃないんですから、「お邪魔して」などの文言にしましょう。店から何か、もしくは店自体を盗んだりするんじゃないかと誤解されるリスクが危険でヤバイです。さらには例年ゲコ亭は6~8月がお休みなのに、リリースの最後に「6月から8月の間は改装を含めた準備期間として休店し、2代目「銀シャリ屋ゲコ亭」は 9月よりオープン致します。 」と仙人ご本人からは聞こえてこない経営移転を前提とした〆になっているなど、いろいろ冗談のセンスが斜め上すぎて、凡人の僕にはどうリアクションしたらいいのかよくわかりません。

どんな意図でリリースをあの文面にされたのかわかりませんが、店を継ぐつもりがおありなら、もう少しゲコ亭のファンの方々に愛されるようなリリースをお打ちになられたほうがいいと思われます。あまりにも村嶋さんの口ぶりと食い違っていて、何か行き違いがないか心配しているうちに、もりもりごはんを食べ進んでしまいそうです。

リリースを鵜呑みにしたかのような某全国紙の誤報のカッ飛ばし方はやっちゃった感満点ですし、その後の修正のとってつけた感も、あまり好きではございませんが、僕もWebの原稿は雑にUP→修正ということもございます。これからもお互いそれぞれに、みなさん元気にがんばってまいりましょうとエールをお送りさせていただき、原稿の修正に戻ります。


2013年7月23日火曜日

麦茶でバズったのはなんでだろう。

なんだかNEWSポストセブンの「麦茶、実はすごいぜ」ネタが、地味なわりに結構バズったので、ちょこっと数字面を中心に検証です。おっと、その前に「ステマに違いない!」「提灯記事だ」という陰謀論がお好きなみなさまがたのご期待に添えずに申し訳ありません。また「地味だ地味だ言いすぎだ!」とお叱りいただいたみなさまがた、ぜひいつか「麦茶の友」として縁側で茶飲み話にでも、花を咲か……ではなく、麦穂を実らせたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

さて件の記事がUPされたのが、16日の16時。約一週間経過したところで、ポストセブン本体の記事だけでツイート500弱、FBいいね1000超、はてブ180。公式フィード先で目立ったところだと、ライブドアニュースのFBいいね1500などなどあれこれありますが、今回、地味なネタにも関わらず、ハネたのはどうしてなんでしょう。自分でもちょっと整理してみたいと思います。

まずNEWSポストセブンで原稿を書くとき、一番意識するのは「ヤフーニュース」のトピックス。ご存じの通り、8ワクしかないこの見出しに拾われると、爆発的にアクセスが伸びます。ポストセブンさんはヤフーニュースの巡回対象となっているサイトなので、拾われる可能性のある切り口で企画を考えます。ただ前回の「焼肉は脳内麻薬分泌系の食べ物」とか今回の「麦茶健康成分まとめ」のようなネタになると、医師のコメントがあった方が拾われやすい。といっても、これまで一般的なニュース媒体で、麦茶に含まれている健康成分をまとめたものがほぼなかったので、どっかで火がつけば伸びるだろうとは考えていました。

だいたい麦茶は浮かばれなさ過ぎます。季節商品なので、各メーカーともそんなに予算を割くわけがなく、そもそも市場規模自体が決して大きくない。安くてうまくてガブガブ飲める庶民の味方で、しかも家で煮出すのがサイコーとなると、メーカーとしても宣伝費を落としにくい。メディア側でもいまさら全体を俯瞰したところから書こうなんて奇特な人はそうそういません。掘るとしても歴史か、いまも手で釜炒りをしている焙煎工場でしょう。というわけで、すっぽり成分関連が抜け落ちていたので、そちら方面から勝手に応援してみたわけです。

上がってみると、予想以上に初速がよくて、掲載24時間後で主要なところは以下の数字。
・ポストセブン本体(Ceron.jp)
ツイート279 g+24 はてブ137 Pocket188 Deli3 YB1 FBいいね576。

・ポストセブンモバイル
ツイート17 はてブ6 Pocket12 いいね65

・配信先ライブドア
ツイート141 g+8 はてブ15 Pocket13 YB1 FBいいね1035

・mixi
1453つぶやき 187日記 7601限定公開→アクティビティ合計9241

初速で効いたのがmixi。mixiニュースのトップに10時間居座り続ける間に、あれよあれよという間にアクティビティ、9000オーバー。ちなみに「限定公開」というのは、友人間など限定された人だけが見られるような設定のことらしいです。さらに配信先のライブドアがこの時点で1000いいねを獲得。ポストセブンはまだまだPCが強いみたいすね。まあお里が男性誌だから、余計そうなのかも。最近どこのウェブもスマホ対策に頭を悩ませていますが、その意味ではあれこれ安定しているという見方ができるのでしょうか。

そして地味だったからか、UP後24時間経ってオフィシャルがそこそこ伸びた頃からまとめブログ系にピックアップされはじめました。ネタが地味だと食いつき悪いのね。でも伸びると、追っかけてくるあたりがうむむむむ。ちなみに、主要なオフィシャル関係はUP4日後で以下のような数字に。

7月20日時点
ポストセブン本体
ツイート480 g+34 はてブ181 Pocket251 Deli3 YB2 FBいいね971

ポストセブンモバイル
ツイート35 g+1 はてブ12 Pocket21 いいね178

配信先ライブドア
ツイート166 g+8 はてブ16 Pocket17 YB1 FBいいね1479

mixi
公開で1466つぶやき 日記192。限定公開計7771


このほか、まとめブログ系にも、ツイートやいいねなどのアクティビティが合計5000くらいついてたみだい。まとめブログは、書き手や世の中に還流する仕組み作れないかなあ。まあその前の「焼肉は脳内麻薬!?」はまとめブログ系ばかりで伸びて、「うーん」という心持ちになったけれども、本体にさえ流入が戻ってくれば伸びること自体は悪いとも言いきれずに、悩みは尽きず。

それにしてもmixiさんは見出しから外れた途端に伸びがピタッと止まる。mixi版ヤフトピと考えると、大変ガッテンガッテン!! なわけでございます。

ともあれ今回の「麦茶」をざっくり推計すると、トータルでのリーチはUU50万くらいでしょうか。まあ、「麦茶」のポテンシャルはいろんな意味で、まだまだ残されているなあと実感した次第で。休憩終了。ごくごく。

2013年7月22日月曜日

NHK、世界征服への道

【All About News Dig】連動エントリー

いよいよNHK無双といえる時代の到来でしょうか。かつてNHKは国内唯一の視聴者から直接放送収入を得る事業者でした。「視聴者=顧客」から直接課金収入を得て、全国津々浦々まで陸海空を問わず、民放が手を出せない領域の素材をていねいに拾い集め、圧倒的な編集力でさまざまな映像作品を作り出してきました。その映像と知見という資産は、他の事業者ではなかなか得られるものではありません。

いやヘタをするとあそこまで自前で素材をそろえて、番組を構成するとなると唯一無二、世界最高峰という気が……

いつ炎上対応するか? いまでしょ!

【All About News Dig】連動エントリー

という昨今ではやや使い古された感も出てきたテイストのタイトルをつけてみました。

さて、たまに「マツーラさんって、やおもてタイプだよね」と言われることがあります。「ややモテ」でも「夜王モテ」ならばいいのですが、どうやら「モテ」とは何の関係もない「矢面」を指していらっしゃるようです。辞書で「矢面」を引くと次のような意味が記載されています。

やおもて 1 矢の飛んで来る正面。 2 抗議・質問・非難などをまともに受ける立場(大辞林)


最初で最後のつもりでこっぱずかしいタイトルつけてみたんですが、やー、これは恥ずかしい。やっぱりこの手の……というか、ややブームが落ち着いてきたところで、そもそもネタとして面白いとも思っていないネタをタイトルとしてつけるのはやめようとかたく心に誓った次第。

2013年7月5日金曜日

子宝基本法と満島ひかりと「Woman」と

【All About News Dig】連動エントリー

今年はテレビドラマの当たり年です。朝の連ドラ「あまちゃん」は言うに及ばず、今週始まった満島ひかりの主演ドラマ「Woman」もまた良作の予感がプンプンします。というのも、この数年、「Mother」「それでも、生きてゆく」「最高の離婚」といった強烈な良作を次々に夜に送り出した坂元裕二が脚本を手がけています。坂元は「家族」をモチーフとした作品で、テレビドラマ関係の賞を次々に受賞。しかも「Women」主演の満島ひかりという女優を「それでも、生きてゆく」で手がけているだけあって、今回も大変期待が高まります。あ、敬称略で申し訳ありません。先にお詫びしておきます。

続きはAll About News Digにて(直リンク)

あ……後半で紹介している、この動画だけはこっちにも貼っておこう。
満島ひかりの「浪漫飛行」90秒Ver.


2013年7月4日木曜日

トクホバカと壮大な人体実験

【All About News Dig】連動エントリー

僕はトクホバカです。緑色の濃いお茶も、黒いウーロン茶も、最近出たクロロゲン酸が多いというコーヒーも、どれも一度はハマりました。どことなく微妙な肩書きの「フード・アクティビスト」という響きに照れ、「給食系男子」というユニットで活動しつつ、実は日本BBQ協会のインストラクターだったりもして、何かとつい食べ過ぎてしまいがち。コンビニで「トクホ」か「非トクホ」の飲料を目の前に見比べると、「ヤセるような気がする」と、ついついトクホを手に……

続きはAll About News Digにて(直リンク)

ご当地ナンバーという逆効果

【All About News Dig】連動エントリー
「地域振興や観光振興につながる」として2006年の導入以降、自動車の「ご当地ナンバー」の人気が高まっているそうです。第二期の募集が今月末に迫っているそうですが、「世田谷」にしても「杉並」にしても「東京湾岸」にしても何を考えているんでしょうか。こんなところで差別化しても、何の役にも立たなければブランディングにもなりません。

そもそも「地域振興や観光振興等の観点から」というのがよくわかりません。わからないので国土交通省の文書を見てみました。ところが上記以上の理由はどこにもありません。ちょっと適当過ぎやしませんか。YouTubeに「会津」ナンバーが……

続きはAll About News Digにて(直リンク)

カジノは大人のヒカリエになれるのか?

【All About News Dig】連動エントリー
カジノ、いいんじゃないでしょうか。というか、反対する理由が見当たりません。それもあってか、反対派の方々の理屈が少しばかりユニークな論を展開しています。

例えば、元衆議院議員の早川忠孝さんはこんなエントリーを。
大阪カジノ都市構想にも東京カジノ都市構想にも反対だが
「禁止しても人の射幸心をなくすことはできず、勝負事のすべてを取り締まることも不可能である」とか「暴力団等の資金源にならないような工夫をした上で、一定程度賭博行為を認める、ということに端から反対する気はない」と、高卒の僕としてはどう反対なのか理解できません。そしてこのエントリーは……

続きはAll About News Digにて(直リンク)

ダンス規制と児ポ法と雀荘と

【All About News Dig】連動エントリー
超不思議です。こっちでは規制見直しに向けた動きが始まっているのに、あっちでは新たな規制の動きです。何の話かというとダンス規制の話です。

5月26日、東京・六本木にある都内最大級のクラブ「バニティ・レストラン・トウキョウ」の経営者が、風俗営業法(風営法)違反の疑いで逮捕されました。逮捕容疑は「飲食店を装って客にダンスをさせた」から。背景には、繁華街と住宅地が隣接している地域で騒音被害や客同士の喧嘩などが起こり、住民からの苦情が増えてきていることもあるようです。

 ダンス規制については、News Digでもテーマが「撮り鉄」のとき「【噂】バカでも文句は言える(らしい)」という、乱暴なタイトルの稿でも触れました。……

続きはAll About News Digにて(直リンク)

ぬれせんの銚子電鉄は「しょっぱい」のか!?

【All About News Dig】連動エントリー

メディアにはときおり首をかしげたくなるようなニュースが流れます。2006年ごろ「ぬれ煎餅で、銚子電鉄を救え!」と、ネットを中心に盛り上がりました。あれから7年、路線長わずか6.4kmの銚子電鉄は、今年再び運行存続の危機を迎えているのだとか。
「銚子電鉄」経営危機 「ぬれ煎餅」頼りでは…運行に支障も」。

今年7月、開業90年を迎えるというのに、相変わらず経営危機に直面し続けているという話で、本日は「廃止? 存続? どっちがいいの?」という、世界のせんべい市場を揺るがしかねないとてつもなく大きなお題でございます。

続きはAll About News Digにて(直リンク)

おっぱいとフレディ・マーキュリー

【All About News Dig】連動エントリー

ちょっと悩ましい選択肢が飛び込んできました。

A. 何でもかんでも男女平等というのはおかしい
B. 男女平等化はどんどん進めるべき

ついついこういう選択肢ですと、Bの「男女平等は進めるべき」と言いたくなるところですが、今回は素直にそうとは言えない大変に困ったお題でした。

というのも今回のお題は「NY市内でおっぱい露出女性増える?-警察取り締まりの対象外に」というもの。どういうことかというと……

続きはAll About News Digで(直リン)

2013年6月8日土曜日

本日のNEWSアグリネタかぶり20130608

・Gunosy→アベノミクスの光と影的な考察×2
・Antenna→なし
・Vingows→相変わらず、WindowsとiPhoneばっかり
・Crowsnest→地震情報たくさん


なんだかニュースアグリも週末っぽい。

2013年6月7日金曜日

極私的NEWSアグリネタかぶり20130607

【本日のかぶりネタは以下】
・Gunosy→ビグザム豆腐発売×2/GANTZ連載終了×2/やまもといちろう×2(Blog&Yahoo)/片山さつき×2
・Antenna→インテルミラノ新指揮官×3
・Vingows→Windows8×2、iOS 7×2、iPhone女子部×2
・Crowsnest→プーチン離婚×4

【寸評】
うん。ちゃんと偏ってる。ジャンルの偏りが心配なら情報の入力量を増やせばいいのだ。自然と居心地のいい量に落ち着くはず。むしろ気になるのはネタの精度。なかなか好みのどまんなかとは行かないもので。それにしてもカブリの少なかったCrowsnestのその他ニュースの精度が高い。「DJポリス」「丸亀製麺」「側溝に潜み空気穴から通行人の下着覗く。神戸の会社員の男逮捕」「奥が奥さんを脅迫」など興味深いネタ満載でござる。

2013年6月6日木曜日

Gunosy/Antennaという偏りの価値

僕のメーラーに毎朝7時半ごろ、あるサイトからメールが届きます。例えば内容は食やマンガなど僕の好きなジャンルのニュースから厳選され……ているかはわかりませんが、ジャンルとして絞りこまれたネタばかり。送信元はGunosy。メールの見出しから気になるネタをクリックすると、そのニュース本体に飛び、詳細を見ることができます。

最近、こうしたアプリやサービスが人気になっています。ほかにもAntennaCrowsnestVingowなどあれこれありますが、各サービスともTwitterやFacebook、はてなブックマークといったソーシャル・ネットワーク上などでのユーザーの行動が反映されたニュースが配信されます。
続きはこちら(All About News Dig)

2013年5月28日火曜日

すごすぎて泣ける! 「アジアトレンドマップ」

【All About News Dig】連動エントリー
「クール・ジャパン」。どうしてそんなに躍起になっているんでしょうか。「勝算があったとしても、株式などの投資は余剰金でやるものだ」と昭和一桁生まれの両親にくどくどと教えられた身としては、不思議でなりません。なんで国が出張ってくるんでしょう。

例えば3月の日経さんにはこんな記事が出ました。

現在の「クール・ジャパン」は「成長戦略」の一翼を担う、国家レベルのビジネス構想です。2009年にその構想自体が頓挫した「国立メディア芸術総合センター(仮称)構想」とはわけが違います。メディア芸術総合センター(仮称)は「文化の拠点」という側面も打ち出していたというか、実際の評価としてはその部分が大きかった。ビジネスと関わりはありつつも、まず「文化」の拠点を整備しようという話でした。実際の投資効果はさておき、文脈としては理解できます。

「わが社宅に格差問題などありません!」というウソ

【All About News Dig】連動エントリー
そういえば、小学校の頃まで僕の実家は3DKの社宅でした。社宅があったのは、JR中央線の吉祥寺駅から徒歩4~5分くらいのところ。塀を乗り越えると、そこは井の頭公園という好立地でした。

いまほどではないとはいえ、当時から吉祥寺の住人はやっぱりブルジョワジーで、同級生には小学生でも名前を知っているような会社社長の子女が結構いた気がします。普通の公立小学校でも、そこはやはり土地柄ということなんでしょう。そちらの印象が強かったせいか、社宅内での格差があったのかどうか、まったく記憶に残っていません。

さてどうしてこういう話をしているかというと、先日、NEWSポストセブンでこんなバカバカしい記事があったからです……。

続きはこちら(All About News Dig)

2013年5月20日月曜日

バブル女子はすべからくおニャン子であるという暴論

【All About News Dig】連動エントリー

僕は特に男尊女卑的思想の持ち主ではありません。本当に本当に本当です。「給食系男子」なんてユニットで活動したり、「フードアクティビスト」とかいうビミョーな肩書きで歯を食いしばってみたりもするので、食事くらいはフツーに作ります。掃除、洗濯も得意ではありませんが、週末にヒーヒー言いながら片付けています。

先般日経ビジネスオンラインでこんな見出しを見かけました。
「出世して、子どもも産め!」。働き方強要社会に疲弊する女性たち。

この「「働き方強要社会」に疲弊」という言い方が、僕はどうにも好きになれません。だってここでやり玉に上げられているのは、「出世志向の女性を応援するよ! 育児環境も整えるよ!」という施策です。

なんて素晴らしいんでしょうか。日本に暮らす僕らは生き方や働き方を選ぶことができます。それだけでも幸せだと思うのですが、さらに生き方の選択肢が増えるとは、素晴らしすぎます。やー、この国に暮らしていて、本当にて……

続きはこちら(All About News Dig)

2013年5月19日日曜日

人類の退化と「所有なきシェア」の謎

【All About News Dig】連動エントリー

人類は退化しています。かつてないほど豊かになり、「多様化」を社会が過剰に認めてしまい、生きる上で必要な力を外部に丸投げしすぎてしまいました。クラウドもシェアも便利ですが、生きていくのに最低限の知力、体力、善意はどう考えても個人所有すべきです。

誤解のないように申し上げておきます。人それぞれ生き方が「多様」であることに何ら異論はありません。むしろ大歓迎です。

しかし協調性なし、努力の方向性が明らかに間違っている、享受しかしてないのに自分では他人や社会に貢献したつもりになっている、などの困った人もいます。そういう人に限って、社会や周囲に対して「仕組みが悪い!」とか、置かれた環境に「不当だ!」とがなりたてています。遠巻きに見ていても、げんなりしてしまいます。

話を変えます。ご存じの方も多いでしょうが、「マズローの欲求段階説」という……
続きはこちら(All About News Dig)

2013年5月14日火曜日

「絶滅の危機」に踊らされるその前に

最近ソーシャルメディア上で、うなぎ関連の話題がにぎやかです。「漁獲量が激減してる!」「禁漁だ!」というコメントが、ピチピチしたイキのいい魚のように飛び跳ねています。

そういえば不漁が騒がれた去年、NEWSポストセブンにこんな記事を書きました。ざっくり申し上げると「うなぎの生態系はわからないことだらけで、謎に包まれている」という原稿で、いいうなぎのようにうまくもなければ、歯切れもよろしくありません。もっともうなぎの不漁の理由について環境省の資料(http://www.fra.affrc.go.jp/unagi/unagi_shigen.pdf )を見てもわかるように、やはり謎めいたまま。

・河川の堰やダムの建造で遡上が妨げられ、生育できなくなった。
・太平洋赤道域の海面水温が平年より高くなるエルニーニョ現象が起きると、産卵場が本来のマリアナ諸島沖から南下し、シラスウナギが海流に乗って北上できなくなる。
・その場合、南向きのミンダナオ海流に取りこまれ死滅回遊となる。
・しかし、ここ数年その関係が明瞭ではない。
・シラスウナギ漁獲量の減少のみで、直ちにニホンウナギの資源量が一段と減少したと判断することは適当ではない。

例によってわからないことがわかったという残念なご報告ではあるものの……

2013年5月13日月曜日

テレ東の『みんな! エスパーだよ!』がすごい件

ヤバイ。2話終了時にUPしようと思って寝かしたまま、物語が佳境に入ってきてしまった。本当はちゃんと書いて、ちゃんと原稿料をもらおうと思っていたのだけれど、仕事が詰まってるので、ちゃんと書く時間がない。寝かしたまま腐らせるのも、もったいない症候群が発症してしまったので、ちょっと加筆だけして乱暴にUPします。

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テレビには「いい番組」に高確率で当たるワクがある。例えば現在、「ガリレオ」のシーズン2を放送するフジテレビの「月9」枠などがその代表格だ。「テレビを見なくなった」といわれる2000年代以降も「HERO」や「プライド」といった大ヒットドラマを生み出し、主題歌はダブルミリオン(200万枚以上)のヒット曲が何曲もある。主演も木村拓哉、香取慎吾などのSMAP勢や江口洋介、竹野内豊など絢爛豪華。近年は、王道だけでなく、サスペンス的な要素を取り入れた「大切なことはすべて君が教えてくれた」(主演:戸田恵梨香、三浦春馬)や、大泉洋をキーマンに据えて軽妙さを打ち出した「ラッキーセブン」(主演:松本潤)など、さまざまな手法を試みている。

「月9」は確かに素晴らしい。現在放送している『ガリレオ』も、福山雅治の相手役を柴咲コウから吉高由里子に変えてきた。第一期であれほどの成功をおさめたというのにかかわらず、配役を変えた。舞台裏で何があったかはわからないが、変えたこと自体、意欲的とも言える。

そしてこの数年、テレビ東京の「ドラマ24」という枠がとてもいい。『モテキ』や『勇者ヨシヒコ』シリーズを排出したいまやテレ東の看板ドラマ枠であり、今クールで放送中の『みんな! エスパーだよ!』もまた素晴らしい。『デトロイト・メタル・シティ』のヒットで知られる若杉公徳のマンガ作品が原作だが、原作を上回るデキだと言っても過言ではない。監督は園子温。「自殺サークル」や「愛のむきだし」などで数々の賞を受賞した、まさにいまノリに乗っている気鋭の映像作家だ。その面白さのツボを以下に上げておく。

ツボその1~中二臭全開の笑いとエロと共感
ドラマ版の舞台は愛知県東三河(原作は大分県野津町)にある田舎の高校という設定。そしてとにかく登場人物の男子高校生も、マキタスポーツ演じる喫茶店のマスターも、誰も彼もが中二らしい「性」にまつわる妄想を全開にしている。唯一、TEAM NACKSの安田顕のみ、性妄想とは遠い立ち位置だが、真顔で助手の女性の乳を揉みまくる。見えづらはシュールだが、乳を揉んでいることに変わりはない。

さらに夏帆と真野恵里菜に、喘ぎまくりというエロ全力投球をさせているのも素晴らしい。中二だったことがある男子誰もがあの頃を思い出し、中二に戻ることができる。「中二」を共感目線で仕上げているのだ。有名な作品しか見ていないので違っているかもしれないけど、目線が高くならないのも、この監督の作品における特徴のような気がする。

ツボその2~主題歌、エンディング曲ともに生々しい青臭さがたまらない(いい意味)
主題歌は高橋優の「(Where’s)THE SILENT MAJORITY?」
エンディングは、石崎ひゅーいの「夜間飛行」
http://www.youtube.com/watch?v=-H3BEBnz75I

最近、ドラマの主題歌がジャニーズやレコード会社ガン推しの(ように見える)アーティストばかりだったが、この二曲ともに中二っぽい青臭さが漂っている。生々しい歌声で、歌詞が青臭く、楽曲がキャッチー。つまり本来あるべきロックの姿を体現している。ちなみにエンディング(ED)のカット割りは毎回、異なっている。そういえば、『最高の離婚』のEDもそうだったが、かけなくても成立するところに手をかけるドラマには良作が多い。監督はじめスタッフの熱意があってこそ、そこまで手がかけられるのだ。

そういえば園子温は、映画『愛のむきだし』のテーマ曲にゆらゆら帝国の「空洞」を選んでいた。新興宗教をモチーフとしたこの作品が公開されたのは2009年。もうオウム報道など皆無で、前時代的とも言えるモチーフに、「空洞です」は強力にハマっていた。曲の雰囲気も1970年代の「俺たちは天使だ!」の主題歌「男達のメロディ」(SHOGUN)をどことなく彷彿とさせた。

ちなみに「男達~」の曲の構成はAメロ(兼サビ)とBメロのみ。「空洞です」に至ってはAメロ兼サビのみ。現代のポップスでは、Aメロ/Bメロ/サビ/Cメロくらいの展開があるのがふつうだ。しかし、園子温はそうした定型的な曲を選ばない。正確に言うと、結果として定型にハマる曲も選ぶこともあるのだろうが、挿入歌を選ぶときの視点が決定的に違う気がする。

2000年の『自殺サークル』では作中での暗喩のモチーフとして、小中学生をメンバーとしたアイドルグループの歌を流し、すかんちのローリー寺西の弾き語りのシーンなども盛りこんだ。「音楽」に聞き耳を立てるだけでも園子温の作品は楽しめる。しかも登場する音楽のすべてが、作品と連動している。映像作品に必要であり、必然性のある音楽をセレクトしている。


ツボその3~作品を貫く、園子温という一貫性
「人間」というとても個人的なものを社会というフィルターを通して描く。それが園子温の手法だ。2000年公開の『自殺サークル』では刑事であり、ひとりの父親を通して社会の歪みを描いた。この作品では「あなたとあなたの関係は?」という生きる上での本質的な問いかけが、全体を貫くキーワードになっていた。『自殺サークル』が「生きることの本質」を描こうとした作品なら、『みんな! エスパーだよ』には中二男子に共通する夢が詰まっている。

と、まだまだ書きたいことはあるけど、ちょっとだけ加筆してタイムアップ。放送中なので、あとは本編をご覧あれ。テレビ東京で視聴可能な方は、毎週金曜日の24時過ぎから。できれば、見逃し配信か何か利用して第一話から見てほしい。

テレビ東京『みんな! エスパーだよ!』公式HP
http://www.tv-tokyo.co.jp/esper/

2013年4月30日火曜日

馬に蹴られる覚えはありません。

【All About News Dig】連動エントリー

フランスの上院議会で「同性婚賛成法案」が可決されました(http://www.cnn.co.jp/world/35030801.html )。これを受けて、「この機会に、日本でも同性婚法案を!」という主張をネット上などで見かけるように。うーん……。同性愛自体には何のネガティブな感情も抱いていませんが、降って湧いたようなこの主張に、正直「えっ!? どうして?」という不思議な心持ちになってしまいました。

現在の僕は女性が好きですし、たぶん今後もそうだと思います。かといって、特に同性愛の方々を嫌悪する気持ちもありません。どんな方であれ、素敵な方とは友人・知人としてお付き合いさせていただいています。そこに男女の別け隔てはありません。いっぽう誰かを愛するというのは、お相手が同性だろうと異性だろうと大変に美しく素晴らしいことです。だいたい人の恋路を邪魔するような無粋なヤツは、馬に蹴られてなんとやら、です。

しかし現段階で「同性婚法制化を進めよう」という話が日本で盛り上がるのには、違和感があります。例えばフランスは、パクス法(Pacte civile de solidarité)という事実婚に対する税制優遇や社会保障給付を一定の条件下で認める法律を、1999年に制定しています。それ以前も宗教などが複雑に絡み合いながら、さまざまな議論と改革が行われてきました。今回の「同性婚」の法制化をめぐっても、一筋縄ではいかなかなかった模様です。

同性結婚法案をめぐり フランスが真っ二つ。

1 29 日から国民議会で討議が始まった「同性結婚・養子」法案に向けて113日、反対派35万人(警察調べ)〜80万人(主催者発表)がパリでデモをくり広げた。27日、同法案支持派が反撃デモ(同12万人/40万人)。前者は、1984年カトリック系私立校改革法案に対し約100万人が反対デモをし、ミッテラン政権に法案を撤回させた大規模な反対運動に匹敵するといわれている。(中略)フランスは、1981年に同性愛を精神病のリストから外した。1982 年に同性同士の「慎みなき行為(性行為)」を罰する刑法を廃止。1999年に同性同士にも適用されるパクス法が成立した。

一方、日本の歴史では、1872年から1882年までの間のみ「鶏姦律条例」という“男色禁止法“が施行されていたものの…………続きははこちら

2013年4月20日土曜日

ターレと築地の男とマグロ包丁

このニュース、けが人もなかったのが、まずは何より。産経新聞さんから引用です。

築地市場でマグロ解体用の包丁振り回す 殺人未遂容疑で63歳男を逮捕 警視庁

東京・築地市場で警察官に向かって包丁を振り回したとして、警視庁築地署は19日、殺人未遂などの疑いで、東京都中野区中野、職業不詳、根上隆容疑者(63)を現行犯逮捕した。同署によると、「正当防衛で、逮捕は不当だ」と供述している。
 逮捕容疑は、19日午前8時10分ごろ、中央区築地の築地市場内で、「殺してやる」などと叫びながら刃渡り72センチのマグロ解体用の包丁を振り回し、同署の男性巡査部長(59)に切りかかったとしている。巡査部長にけがはなかった。
 同署によると、根上容疑者は魚を購入しようとして、市場関係者とトラブルになったとみられ、「仕事中にしつこく話しかけてくる不審な男がいる」と近くの交番に連絡。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130419/crm13041914560002-n1.htm

気の荒い市場の男たちの仕事道具を奪って、斬りかかるなど、いろんな意味で命知らずもいいところではございますが、一般紙各紙の情報はだいたい他紙も同様で、微妙に落としこみのチューニングが違う程度というところでしょうか。

上記の産経さんのまとめは以下の通り。事実をコンパクトに書く、まさに報道の王道といえる記事でございます。

根上容疑者は事情を聴こうとした巡査部長を振り切って逃走したが、包丁を持って戻り、襲いかかったという。


一方、東京新聞さんのまとめはこう。

当時、市場には外国人ら多くの観光客がいて、一時騒然とした。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013041901001585.html

記事の構成は大きくは変わりませんが、「東京」の冠を持つ矜持か、「外国人ら多くの観光客」に焦点を当て、コントラスト満点の臨場感を演出。もっともいまの築地の観光客は中国・韓国からの方が多いので、もしかすると誤解を招きかねないような気もしますが、恐らくこれも狙いすましたゴルゴ13的一撃と思われます。ちなみに産経さんの本社は千代田区大手町、東京新聞さんは内幸町。

ところが、市場にほど近い築地に本社を置く朝日新聞さんとなると、落としこみが変わります。さすがの臨場感。
http://www.asahi.com/national/update/0419/TKY201304190089.html
巡査部長は警棒で応戦し、市場関係者らも自転車を投げつけるなどした。男は近くに止めていた自分のワゴン車に乗り込み急発進しようとしたが、巡査部長が窓をたたき割り、取り押さえた。

そして何より振るっていたのが、朝日と同じく築地に本社を置く日刊スポーツさん。前段の基礎情報は一般紙各紙とほぼ同様ですが、コメントの取り方や後半の落とし込みが素晴らしい。まさにこれぞスポーツ紙的ドキュメンタリーと言っても過言ではありません。


築地市場内乱闘犯 ターレで包囲し捕獲

http://www.nikkansports.com/general/news/p-gn-tp0-20130420-1115029.html
築地署によると、事件の直前に市場関係者が近くの交番を訪れ、不審な男がいると通報。巡査部長が駆けつけると根上容疑者が突然逃げ出したという。包丁を奪われたマグロ仲卸店の男性従業員(43)は「バケツに入っていたマグロ包丁を奪われました。突然のことでびっくりしました。目が血走っていて危ない男だと思った」と興奮気味に話した。
 その後、根上容疑者は車で逃げようと包丁を振り回しながら駐車場まで移動した。現場を目撃した、市場内ののり店で働く高島将司さん(23)によると、「(容疑者が)車を動かしたけど場内の人がターレ(小型運搬車)で体当たりして、4台のターレで取り囲みました」。さらに、屈強な市場関係者たちも続々と集まり包囲し、逃走を阻止した。根上容疑者は車内でも包丁を振り回し威嚇していたが、市場関係者らと警官が車の窓を割るなどして取り押さえた。足を取り押さえた、配送業の佐藤勝俊さん(44)は「この市場で逃げられるはずないですよ。みんな気性が荒い人たちなんだから」と胸を張った。

ちなみに「ターレ」というのはこちら(http://www.ukemochi.com/tkg/tuur/tuur.html)。場内を縦横無尽に走り回る、小型運搬機で、数年前までは、お行儀の悪い外国人やおばちゃん観光客などが、わざとじゃないかと思えるような精度で軽く轢かれたりする姿もお見かけしました。その旋回力、運搬力において、他のどんなモビリティの追随も許さぬ、場内最強の機動力を誇るマシンです。


「ターレ」という一般には通じるはずのない築地用語をさらっと見出しに持ってきた上に容疑者を「捕獲」という、まるでマグロか何かのような扱い。「俺たちの築地で何してる!」という怒りをグッとこらえて見事にエンターテインメントに昇華。立派な刑事事件なのに、スポーツ紙らしく「乱闘」で片付けているのも実におしゃれ。ついでに記事前半では「マグロ解体用の包丁」とあったのが、コメント内では「マグロ包丁」と築地用語的なチューニングがほどこされ、もうこれは場内の「高はし」の魚定食や「センリ軒」のカツサンドが食べたくなって仕方がありません。お腹すいた。


ともあれ世界に誇る「Tsukiji」の場内で、こんなご乱行が許されるわけもないのですが、日本経済において、ある意味根幹とも言える東京の台所でこんな大事件が起きているのに、なぜ天下の読売さんや日経さんが報じないのか。築地の朝日さんに対するルサンチマンか、何らかの陰謀かなどとありもしない妄想を膨らましながら、通常業務に戻ります。


※追記

YouTube

http://www.youtube.com/watch?v=lAXSxKwrLyA

NAVERまとめ
http://matome.naver.jp/odai/2136633638327618501

※再追記
この動画を見たTwitter住民さんの一部で「築地こわい」という感想が漏れ聞こえてきておりますが、現在の築地のおっちゃんたちは、普通にしていればとてもやさしいです。お気軽に足をお運びになることをおすすめしますです。

2013年4月17日水曜日

渡る世間はバカばかり……?

【All About News Dig】連動エントリー
昔、桃井かおりさんが「世の中、バカが多くて疲れませんか」と視聴者に向けて問いかけ
るようなCM がありました。大変素晴らしいCM だったのに、どこかのおバカさんたちか
らクレームが殺到して放送中止に追い込まれたといいます。そんなところも含めてさすがです。仲畑貴志さんのコピーはいつも人の心に届きます。素晴らしい! 大好きです。

さて話は変わります。今年の4 月1 日、以下のエイプリルフールネタがツイッターやフェ
イスブックで物議をかもしました。

……続きはこちら(All About News Dig)

2013年4月9日火曜日

バカでも文句は言える(らしい)という噂

【All About News Dig】連動エントリー

その昔、ベンジャミン・フランクリン先生が「バカでも文句を言ったり、あらさがしはできる。そしてたいていのバカがそれをやる」と言ったそうです。いえ、次のブロックから書くこととはなんの関係もありません(強調)。
 
 
「違法行為には厳しく」なんて、書店やコンビニ店頭で見かける「万引きは犯罪です」のポスターのようです。そんな言葉がメディアの見出しに踊るほど、「撮り鉄」のリテラシーは懐疑的に見られているということで……。

続きはこちら

2013年3月26日火曜日

カイモノとハコモノ

【All About News Dig】連動エントリー
後から考えると、「なぜ」と思う量、ものをなぜかその場ではほしくて仕方がなくなってしまう。衝動買いの魔力、恐るべしです。

閉店間際で半額だからと、夕食の食卓にのぼるかわからない刺身を買ってしまう。もしくは「いまから17時まで、もやしが1パック5円!」などと煽られると、ついついそのコーナーにダッシュしてしまい、周囲の方々から「あんたはおばちゃんか!」という心のツッコミを頂いているような気すらするわけです。

その一方で、いい年した男3名ほどで飲み会のつまみをスーパーに買いに行くと、やたらと盛り上がってしまいアホほど買い物をしてしまいます。留守を家主夫婦に任せて、好き勝手に買い物をして「一人4000円なら安く上がったね」などとご満悦。

これが男の飲み会における衝動買いにありがちなパターンであり、金銭感覚です。一人4000円という金額は、家呑みにしてはまるで安くありません。買いすぎです。消費しきれず、飲み会の終盤には「うう。苦しい」を連発したり、「残った食材は寄付するね」などと言い残し、相手の冷蔵庫の都合も考えずに、そのお宅を後にするわけです。

ところで以下のニュース。衝動買いだったのかは、よくわかりませんが、飲み会時の男の買い物と大変似ております。

江戸~昭和のおもちゃ計6億円 大阪府が民博に譲渡
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/20130312-OYT8T00429.htm

上記の状況を整理しつつ、妄想を膨らませると以下のような流れでしょうか。
・1993年、大阪府「資料になりそうなおもちゃ、5万点以上、約6億円分を買い集めたYO!」
・1999年、総工費171億円をかけた話題の大型児童館「ビッグバン」におもちゃの一部を展示
・2008年、橋下徹知事(当時)、就任直後に「ビッグバンは廃止、もしくは売却を」とご指名
→「そこをなんとか!」と廃止はまぬがれる。
・2012年、府の監査委員「そういえばあのおもちゃ、維持費だけで年間400万円かかってるし、お前が持ってても意味なくね?」とツッコミ
・2013年、「あわわ。どなたかお引取りを!」→国立民族博物館「くれるなら、もろとこか」

ううむ。どことなく、男による飲み会つまみの買物ツアーと似ています。全体を見ることなく、自分の好きなつまみをカートにドカドカ放り込んだものの、食べきれずに家主の嫁から「や、もう、おまいらには買い物には行かせん」と叱られ、家主からは「ていうか、こんなに買ってきてどうすんだ」と頭を抱えられる。「食べるから許してー」と懇願するも、やっぱり食べきれず、家主に寄付という流れでしょうか。ありがちです。僕も数年前までこんな感じのことをよくやっておりました。

もっとも決定的に違うのがおカネの出どころ。友人同士の買い物では、男の買い物隊に食材……ではなく贖罪意識が発生し、少し多めにおカネを払ったりしそうなものです。もっとも、大阪府のケースでは6億円のおもちゃ購入を決めた部署や担当者が、弁済したり詰め腹を切らされたとかいう話は聞こえて来ませんが。

「まったく何のために、あんなものまで買ったのか……」とため息混じりに聞こえてくるグチが大阪府民のものか、数年前の僕の友人夫婦によるものなのかはよくわかりません。ともあれ、おすそわけされたことで、貴重な資産を冷蔵庫で腐らせるようなことにならないと思えるのは、よかったような気もします。

しかし、余剰分がおすそ分けされた先でどうなるかはわかりません。余剰資産というか、ただムダなスペースの移転に過ぎずに終了ということも十分に考えられます。結局のところ、自分の身の丈に合う量を買うのがいいという、ごく当たり前の結論にたどり着くのは、それが圧倒的な真理だからかもしれません。

2013年3月21日木曜日

裸婦像と恥の文化とBlogという発信ツール

なんだかあちこちのメディアで、結構な騒ぎになっている、島根県奥出雲町。昨年夏に公園などに設置したダビデ像とビーナス像という、 巨大な裸像を目にした町民らは「子どもが怖がる」 「教育上ふさわしくない」と町議に苦情を申し立て、町議会でも取り上げられるなど 世界中から注目をあびているそうです。

この件について、奥出雲町の町議さんは去年の9月の時点でBlogに以下のようなエントリを投稿されてらっしゃいます。
http://ameblo.jp/tomuramura/entry-11345897420.html
http://ameblo.jp/tomuramura/entry-11475423040.html

>寄付していただく段階で、もっと他のもの(スサノオ像や稲田姫像、
>遊具や休憩所等)や現金にしていただくことはできなかったのか。
>設置されて数日しか経っていませんが、かなりの反響というかクレームがあります。
>それは、そうでしょう。奥出雲との景観とはマッチしないし、
>子どもたちも多く集まる場所に、男女の裸体の像ですので。。。

うーん。台座の原資として、1500万円という町の予算が使われたことに疑問を呈しながら、寄付が(他のものや)現金にならなかったものかという謎の変化球を投げていらっしゃいます

さらには「景観とはマッチしない」というなら、奥にある極彩色のブランコのほうが、よほど景観にはマッチしません。町民から疑問の声が上がっているということであれば、町議さんとしてはこういうエントリになるのは仕方がないのかもしれませんが、歯切れが悪い上に、どうも話の展開がうまくないような気が……。

ところで、実は日本において似たような問題は100年前から起きていたのだとか。

>当時は芸術であることを強調するため、日本人離れしたプロポーションに描いたり、
>腰巻で下半身を隠したりと、さまざまな創意工夫がなされた。

記事中では「明治期に初めて裸の絵を見た人は、笑うか、『肝心なものが見えてない』といって怒るかの2種類の反応が大半で、そうした時代に多くの画家たちは『芸術としての裸』を確立すべく苦心」してきたという識者の意見を紹介しています。

日本人は「羞恥」の概念が強いと言われます。文化人類学者のベネディクトが1946年に出版した『菊と刀』のなかで、日本人を「恥の文化に属する民族だと規定したのはあまりにも有名な話ですが、果たして本当にそうなんでしょうか。

20メートルの巨大裸婦像が英国の町に 「わいせつ」「グロ」と物議醸す
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1210/18/news121.html

「芸術か、それともワイセツか」学校前の巨大裸婦像看板が話題に―中国(凜)
http://kinbricksnow.com/archives/51754767.html

結局のところ、今回のような問題は全世界で起きている模様で、本当に問題なのは、歳費で裸婦像を展示することでも、「町民から疑問の声が上がったから」と俎上に上げたことでもなく、問題提起の手法を含めたディベートや情報発信の技術なのかもしれません。一昔前なら、こうした話題が世界に向けて発信されることもなかったでしょうから、町長さんも町議さんも奥出雲町自体もちょっぴりかわいそうな気もしないでもありませんが、町議さんにおかれましては、Blogで発信している以上、こうした話題になるのもまた、仕方のないことだと割りきって、日々のお仕事に邁進していただきたいとエールをお送りさせて頂きます。

2013年3月12日火曜日

その「魂」は合っている?

【All About News Dig】連動エントリー
零細ではございますが、僕は小さな編集プロダクションを経営していたりして、社是というか、絶対に守らねばならない心得みたいなものを自分や社内に課しています。

「三方よし」。江戸時代に近江商人の商売の心得で「売り手よし、買い手よし、世間よし」を「三方」としたものです。商取引をしたときに、売り方、買い方、双方が喜んだ上で、世間も喜ぶような商売をしようという、心がけを言語化したものです。

実際の仕事のどこにどれくらい反映しているかと聞かれるたら、すべてに具体的に答えられるわけではないかもしれません。でも、迷ったときに原点に立ち返るきっかけや、万が一「三方よし」が実現できなかったとき、反省し、検証する土台の考え方にはなります。

ところで、先日「新入学生の親が選ぶ、(子どもに持たせたい)携帯キャリア」に関する調査結果を目にして、アゴが外れそうになってしまいました。見出しに「新入学生の親が選ぶキャリア、安心・安全・低料金でau……子どもが選ぶ端末は iPhone」とあったのはともかくとして、驚愕したのは「子どもに持たせたい機種でスマートフォンを選択した理由」です。


1位 子どもがスマートフォンをほしがっているから
2位 自分と一緒(同系統)の機種だから
3位 今後スマートフォン以外の携帯電話は時代遅れになるから
4位 インターネットが使いやすいから
5位 機能が豊富だから
6位 アプリやサービスが充実しているから
7位 親との連絡が取りやすいから
8位 スマートフォンを持っていないと時代についていけなくなるから
9位 持っている人が多くて安心だから
10位 勉強に役立ちそうだから

調査の前提として「携帯、それもスマホを買い与える」があるにしても、何のために携帯(スマホ)を買い与えるのか、まるで理由になっていません。もちろん選択肢に誘導された面はあるにしてもです。よく昔のドラマで「人様に迷惑をかける子にだけはなってくれるな」というセリフがあったような気がします。上記の調査からは買い与えることでどういう人間に育ってほしいか、まったく見えないのです。

強いて言えば、3位は「先進的な人間になってほしい」という意図があるような気がします。もっともスマホの機能ごとき、大学に入ってからでも楽勝で覚えられるでしょう。ほか、8位に関しては「友人とのコミュニケーション構築に必要だから」という理由であれば理解はできます。しかし学生が使いそうなほとんどのアプリはガラケーでもほぼカバーされています。

上のふたつについては「早いに越したことはない」と考えるのは理解できるにしても、他の選択肢はどういう理由で選んでいるのでしょうか……。2、4、5、6、7位あたりの上位は根本的な考え方が間違っているというか、親自身がスマホを含めた携帯電話の機能をよく理解していないような気が……。

上記調査で「機能性」を挙げる人がたくさん見受けられます。しかし、子どもにスマホを与えたら必ず遊びの道具として使います。「UI(ユーザーインターフェース)が直感的ですぐれている」と言われるiPhoneが子どもに人気なのも、すぐに遊びに使えるから。もし買い与えるなら、遊び道具と割りきって買い与えたほうが、後々親も子もお互いにダメージが少なくて済むのではないでしょうか。そもそも高い機能で何をさせたいのか、意味がわかりませぬ。

僕は主にガラケーを使っていて、サブで電話機能のある7インチタブレットをスマホ代わりに使っています。僕がスマホ(的なタブレット)も使う理由はただひとつ。メディアやアプリの制作に関わるとき、使ってみないとユーザビリティがわからず、動作確認ができなければ仕事にならないからです。

極論すれば、すべてのツールやサービスは、自分の将来のためになる材料を収拾するためにあると言ってもいい気がします。その判断が子どもにはできない(もしくは親を説得する言葉を持っていない)。そこで「買ってあげる理由」を親がわざわざ探さなくてもいいのではないでしょうか。でも、子どもがスマホを使うことによって、どんな人間に育ってほしいかという「理念」はあるんでしょうか。

仮にないにしても、「親である自分が自己満足のために買い与えたいから買うのだ」くらい言い切ってくれたほうがまだすっきりします。「子どもがほしがっているから」とか、子どもに責任を押しつけちゃうのは、いかがなもんでしょうか。

僕の大好きなマンガに「大東京トイボックス」(うめ)という作品があります。その第一巻に駆け出しの新人が持ち込んだダメダメな企画書に対して、主人公がなんとかホメどころを探すシーンが登場します。そこで主人公の天川太陽が言った言葉は……。

「魂は合ってる」

昭和で本当にすみません。でも、最後の最後、魂が合ってるかどうかはとても大切な気がします。昔のドラマでよく「人様に迷惑をかけるようなことだけはしないよう、躾けております」というような場面を目にしました。それもまた「魂」であり、教育理念の形でしょう。

何かアクションを起こすとき、「理念」とか「志」とか「魂」を見つめることが、何よりも大切なことなんじゃないか。そんな風に自分に言い聞かせて、本日のエントリーにかえさせていただこうと思うわけです。

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2013年3月10日日曜日

スナフキンは「涙」に何を思うのか。

【All About News Dig】連動エントリー
ちょっと前に、「◯カツを使うとバカになる」という、言い過ぎなエントリーをさせていただきました。ざっくり申し上げると、「手段の目的化」と「思考停止」にまつわる話です。そんなおり、News Digでまたもこんなお題がやって参りました。


心に効く! 働き女子を救う「涙活」って?
http://wol.nikkeibp.co.jp/article/trend/20130213/145821/

記事の骨子をざっくり要約すると「涙を流すとストレスが解消される。その効果が注目されている。最近では積極的に涙を流そうという『涙活』も行われている」ということのよう(記事構成の順番は逆)。

ちなみに、この記事は「何でもかんでも泣けばいい」と提案しているわけではありません。記事中では、大学の医学部教授を識者に迎え、流す涙の種類や泣くときの作法にも注意を促しています。

「ストレス解消に効果があるのは、悲しいときや感動したときに流す“情動の涙”。これは人間だけが流すことのできる涙であり、神様が与えてくれた宝物のようなものです」

「周りを動かそうとしたり、相手にストレスを与えるような涙はNG。あくまでも自分のために流す涙であるべきです」

どうも「泣けばいい」というわけではなさそうです。そこで何が大切かちょっと考えてみました……(熟考中)。

・目的→「ストレス解消」のため、「副交感神経」のスイッチを入れること
・そのための手法→「感情を動かす」こと

タイトルは「涙」重視。しかし内容を見ると、中盤から後半は「泣けばいいというわけではない」という識者コメントも。しかもその医学部教授は「チャクラ」という言葉を使っている。あれこれ、どう捉えたらいいんだろう、と悩んでしまったわけです。

そんな風に考えると、せっかく副交感神経を刺激するならば、アニマル浜口さんの「笑いビクス」のほうが、自分も周囲も元気になったりするんじゃないかとか考えてしまうわけです。もちろん「涙」という型から入るのもいいと思います。でもあくまでも目的は心をやわらかくすること、そして心が動くポイントを自ら探ることのはず。「型から入るも型に終わらず」というスタンスでのぞめば、「涙活」もうまくいくかもしれません。

ムーミンに登場する吟遊詩人、スナフキンは「涙」にまつわる数々の名言を残しています。

「いざ泣こうとすると、泣けないことってあるだろ?」
「(涙は)実に素晴らしいよ。だから涙はもっと大事にしたいもんだね」

スナフキン! あなたはやっぱりカッコイイ!

2013年3月6日水曜日

シェアとドラマと男と女

【All About News Dig】連動エントリー
以前、「おトイレごはんな若者(後編/本論)」というエントリーを書いたときに、「共食をするのは人間だけ」「個食がコミュニケーション能力の育成を妨げている」という話に触れました。

といっても、共働き家庭が増え、少子化が定着したいま、家庭で「共食」を育むのは難しい面もあります。未婚率も高止まりしたままですし、学校給食や寮生活なら「ともに食べる」ことはできても、料理を作る、片づけるなど、「共食」に欠かせない周辺能力の向上も見込めない。まあ、いい年をして、仕事や趣味にばかりにかまけている僕が言うことでもありません。すみませんすみません。

「血縁」「地縁」を中心とした、昔ながらのコミュニティに加えて、ネットやソーシャルメディアで人間関係が構築されるようになった最近では、別の特徴が際立ったコミュニティも生まれてきています。例えるなら「稼縁」(年収が近く、暮らし向きが似ている層同士によるコミュニティ)、「属縁」(趣味や仕事など、属性が近いもの同士によるコミュニティ)とでも言いたくなる集合体の形です。



先日、東京新聞で「シニアにも人気 シェアハウス」という記事を見かけました。高齢者と若者がひとつ屋根の下で暮らすという、まるで三世代同居のようなスタイルが生まれてきているのだとか。収入が少なかったり不安定な若者と、おそらく年金暮らしであろうお年寄りが共同生活を行なっているというのです。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2013022002000159.html

いま放送している連続テレビドラマ「シェアハウスの恋人」でも「稼縁」とも思える設定は見られます。物語は、主演の水川あさみ(事務職)、谷原章介(離婚して失職)、大泉洋(スーパーの店員)が、それぞれ異なるきっかけでシェアハウスに暮らすようになるというで展開されます。



ドラマのスタート当初には、おそらく説明も兼ねてでしょう。「食べ物・飲み物には各自が記名し、人のものに手をつけてはならない」という、シェアハウスのひとつの特徴が描かれたシーンがありました。ところが、ともに暮らすうちに、大泉洋演じる川木辰平(シェアメイト中、唯一の料理好きという設定)が他の二人に食事を振る舞うようになります。回を追うにつれ、一緒に料理や片づけをしたり、3人で食卓を囲むなどのシーンなども目につくように。正体のわからない「エッグベネディクト」を水川あさみと大泉洋がともに作り、谷原章介に振る舞うシーンなどは、一昔前なら「家族」をモチーフに描かれそうなシーンでした。

「家庭での食事」には、準備も片づけも必要です。誰しも「サザエさん」的な血縁での食事シーンでは、もはやリアリティを感じさせられません。例えば、上戸彩、飯島直子主演の「いつか陽のあたる場所で」の作中でも、屋内での食事シーンは「前科持ち」のふたりがどちらかの家を訪れ、身を寄せ合うようにして食べる「食事シーン限定シェア」とも言える光景が描かれています。

瑛太、尾野真千子らが出演する「最高の離婚」に至っては、離婚したにも関わらず、同居を続行し、食卓をともにするふたりの姿が描かれています(しかも瑛太のほうが細かく、尾野真千子のほうが大ざっぱ)。元夫婦によるルームシェアという奇妙な関係は、今後のふたりの成り行きを暗喩しているのでしょうか。そういえば、つい先日までWOWOWで放送されていた「女と男の熱帯」でも、ふたり暮らしをする渡部篤郎と息子の家を訪れた藤原紀香がおぼつかない手つきでカレーを作るというシーンがありました。

その他、いずれのドラマでも、食卓を囲むシーンに「料理をする」「片づけをする」など前後の風景が描かれています。「家族」をはじめ、コミュニティの形に変化が伺える現代でも、食卓を囲むために必要な作業はあるはずです。だからこそ、ドラマにリアリティを生む「食卓」のシーンは、人間関係を象徴するための装置として、ひんぱんに使われるのです。

実生活でもドラマでも、強固なコミュニティには「共食」という場面が必ずあります。それは「シェア」という、まだありかた自体が明確ではないコミュニティにおいても変わりはないはずです。「食」は誰かとともに過ごすための最強ツール。その準備から片づけまでをともに行い、コミュニティのなかで「共食」を完結させることでその関係はよりしっかりしたものになるはずです。

2013年2月27日水曜日

炭水化物と新聞広告と思い込み

【All About News Dig】連動エントリー
お恥ずかしながら、参加している調理ユニットで、角川書店の文芸誌「小説 野性時代」さんで「レッツ! 粉もの部」という連載を持たせていただいています。いまも担当してくださっている女性編集者のSさんからご依頼をいただいたとき、メンバー一同、驚愕したのを覚えております。しかし最初にごあいさつさせていただいたとき、彼女から発せられた言葉は、さらに衝撃的でした。

「女の子は、炭水化物、大好きですよ!」

雑談をしている最中、僕が「女性って、炭水化物を遠ざける人が多いじゃないですか」と軽口を叩いたところ、上記のようなコメントが返ってきたのです。ふだん女性の友人たちから「ダイエット中だから炭水化物は食べない」というようなコメントをよく聞かされていたので、てっきり女性は炭水化物と仲がよくないと思い込んでいました。でもそれは思い込みで、次のような構造もあるわけです。

1.炭水化物が大好き

2.好きだから、つい食べてしまう

3.スタイルが気になる

4.炭水化物を減らす(そしてフリダシの1.に戻る)

つまり僕の印象に残っていたのは、3.と4.の女性が多かったのでしょう。それが女性のすべてだという思い込みです。そしてこうした思い込みは、いろんなところに転がっています。

例えば「新聞」というメディアが男女のどちらに響くかというと、「男性が読んでいる」というイメージが強いのではないでしょうか。例えばドラマなどでも次のような場面がよく描かれます。

・朝食を食べながら、父親が新聞を読んでいる。
・トイレで新聞を読む父親が母親や娘から文句を言われている。
・満員電車で縦に折った新聞を男性が読んでいる。

女性が読んでいるシーンでも、「仕事をしている女性が出勤前、朝食を食べながら」など、「男性的なシーンの象徴」として描かれることが多いようです。ところが最近の調査では、ほとんどの年齢層においてそれほどの差はありません。以下のグラフのピンクの線が1975年、点線が2000年、黒い線が2010年です。70歳以上で、大きな差がついていますが、それ以外の層での差異はほぼ数%以内にとどまっています。

※社会実情データ図録(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3957.html)より。


そしてこんな記事もありました。
新聞広告は男性よりも女性に効果的【ADK調査】
http://markezine.jp/article/detail/17229

広告会社のアサツー ディ・ケイの、 「消費者にとっての新聞・新聞広告の価値についての調査」 によると、女性は男性よりも新聞広告をよく見ており、参考にする度合も高いことが明らかに」なったんだそうです。

「新聞を読むのは男性」という前提となる思い込みがズレているばかりか、新聞の読み方も、広告面に限って言えば「女性のほうがよく見ている」というのです。この調査リリースについては「そんなわけで、みなさん、女性向けの広告を新聞に打ちましょう」という深謀遠慮があるのかもしれませんが、なんにせよ、世のあちこちで見かける、届けたいものも届かないという不幸な光景は、勝手な思い込みで先走った結果に由来するところも多いような気がします。

●というわけで、本日覚えたこと。
女性は意外と炭水化物が好きである。
女性は意外と新聞を読んでいる。
女性は意外と新聞広告も見ている

あ、「女性は意外と」というのは、特に女性蔑視という意味ではなく、あくまで「世間のイメージと比べて」という意味だと予防線を張らせていただき、本稿を締めたいと思います。

2013年2月25日月曜日

俺のイタリアン(フレンチ)とAKB48の地肩の強さ

【All About News Dig】連動エントリー

新しくて目立ちやすい手法というのは、周辺からあれこれ言われがちなもの。とりわけブームになるような「商品」「サービス」はその傾向が強うございます。

飲食業界で言うと「一流店の味を格安で提供する」と言われる、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」といった話題の店舗を次々に展開するバリュークリエイト。回転率を上げるという驚くべき手法で、1皿あたりの単価を抑えつつ、数量限定で「原価割れメニュー」を導入するなど、キャッチーな戦略を導入した結果、結果1日あたり3~5回転という驚異的な高速回転で成功をおさめている模様です。

こうした新しい試みはあちこちに波紋を呼びます。絶賛の声も上がりながらも「本当に利益が出るのか?」とか「技術を安売りして、今後やっていけるのか」などさまざまな声が飛び交っているよう。

こうした既存の商慣習を打破する手法は、いつの時代もどんな業界にも存在するわけで、他業種に目を向けると、現在、その最たるものがAKB48と言えるでしょう。少し前にこんなニュースがありました。

面白ければ結果はどうなったっていい? AKB握手会の罰ゲームに賛否。
http://news.mynavi.jp/c_cobs/news/techinsight/2013/02/akb-119.html

記事中では
罰ゲームで粉にまみれるメンバーの姿に「盛り上がりが写真で伝わりますでしょうか?」とコメントしたものや、「ぶら下がり罰ゲーム」と説明した鉄棒にぶら下がるメンバーの写真がアップされた。ぶら下がり罰ゲームの方は落ちると体重が明らかとなるしくみだ。

という記述の後に

同イベントでは体調を崩して途中退場したメンバーや、泣き出したメンバーもいたようだ。


と続いておりました。いったいどんなことをやったら、賛否の声が寄せられたのでしょうか。と思って、戸賀崎支配人のGoogle+を見てみると、画像や動画が残されていました。
https://plus.google.com/103388469578205010447/posts/bGXc8X3zwii
https://plus.google.com/103388469578205010447/posts/Qk1CNG5aJHb

よくよく読むと、メンバーが体調を崩したり、泣き出したことと、このイベント企画の因果関係は、この記事からはわかりませんでした。受け手としてはうっかり煽られないよう、より情報の精査が必要になるわけでございます。まあ、AKB48はこうした「芸能人運動会」的な企画を有料イベントとして行い、Google+のようなSNSとの連動展開をあのスケールで実現した先駆者。反響が大きいからこそ、ネガティブな声も聞こえてきてしまうというところなのかもしれません。

「俺の~」にしろ、AKBにしろ、こうした「新しいモデル」はそのモデル自体がいつかは消費されたり、飽きられることを、織り込みながら設計されています。例えばバリュークリエイトは、最近「俺のやきとり」など客単価がさらに安い業態にも進出しています。AKBにしても、国内・海外問わず、同じモデルでさまざまな試みを行い、さらなる当たりモデルを引き当てようと、さらなる高みを目指す姿勢に下げた頭が上がらなくなるわけです。

一方、「新しいこと」の認知を進める過程では、ソーシャルメディア上などでネガティブな声の拡散リスクもあります。とりわけ、表向きのイメージと舞台裏での素顔が違っていたりすると、炎上につながりやすい。自戒を込めて申し上げると、一部の大天才の方々は別として、「正直に」「善良なスタンスで」「目の前にあることを最大限に楽しむ」のは、意外に重要だということをことあるごとに再認識させられるわけでございます。

最近では、一撃で当たりを引くなどという図々しいことを考える人は少なくなりました。結局のところ、次々に球を投げられる地肩の丈夫さが、成功につながりやすいのは、いまも昔も同じということなのかもしれません。

おっと、Blogじゃなくて、企画書書かなくちゃ。

2013年2月23日土曜日

ドライエイジングビーフ(DAB)を考える

そういえば、最近「食べもの」の話をあまり書いていなかったので、下書きに寝かせておいた話をひとつ。先日の「鳩山家の食事に見る「庶民感覚」の正体」でフォアグラの話に触れたので、ここいらでいったんあげておきます。

僕は基本的に食べ物の好き嫌いはありません。たまに食べるジャンクフードもおいしく頂きますし、「くさや」だっておいしく食べられます。いわゆる「食べ物」で苦手なものはほとんどありません。きっと貧乏性なんでしょう。ただ、いくつか引っかかっていることがあります。

ちょこちょこ書いている「調理の常識の間違い」とか
「重層的な味わい」ばかりを目指して味を足しまくる傾向とか
ハレとケ(外食と家メシ)の境界線の溶け方とか
大人と子どもの食べものの混同っぷりとか

いろいろと思うところはありますが、とりわけ、気持ちの処理に困る食材があります。

ドライエイジングビーフ(DAB)。牛の枝肉などをむき出しのまま、冷蔵庫内で数週間かけて熟成させた牛肉です。ドライエイジングは、アメリカのステーキハウスなどで使われる熟成法で、最近、日本でも「香りがいい」「味わいが深い」と取り上げられるようになりました。

ちなみに現在、日本で流通するほとんどの牛肉は真空パックで熟成させるウェットエイジングです。ドライとウェットの違い(モータースポーツのタイヤみたいですがw)は、このあたりのサイトにお任せします。

さてどうしてDABについて微妙な気持ちになってしまうのかというと、可食部を大幅に捨てざるを得なくなってしまうからです。以前、DABの旨さに感動して、図々しくも「自分で作れないものか」と挑戦してみたことがあります。温度や庫内環境などあれこれ調整すれば、数kgサイズの肉でもそれなりにおいしくはなる。しかし、本来食べられる肉の半分以上を、捨てることになってしまうのです。

これまで屠畜やエイジングを人の手に委ねて、お肉を手に入れてきたので、想像力が欠落していました。カビが生えた表面や、そこから数cmにわたって変質して乾燥した部分はトリミングして捨てざるを得ません。この作業が耐えがたい。「『いただきます』は『命をいただく』こと」と教育された身としては、「(命を)粗末にしているのではないか」という罪悪感にさいなまれてしまうわけです。

調べてみたところ、DABでの歩留まりはプロの業者さんでもいいとこ6割弱。つまり4割以上の肉はムダになってしまう。そう聞くと今後、DABを自分で注文はしない気がします。いまもフォアグラを遠ざけているのと、少し似ているかもしれません。といっても今後、絶対に口にしないかというと、わかりません。ハレの宴席で食事を出されて残すのも違うような気がします。うーん。「いただく」ことはいつも難しうございます。

だいたいこのエントリーにしても、数ヶ月下書きに寝かせていたわりに、大変に歯切れが悪い。まあ、長く寝かせりゃいいってもんじゃないのは、肉もエントリーも同じということでしょうか。できれば、肉もエントリーもおいしくムダなく、いただいたり、お届けしたいところでございます。

2013年2月21日木曜日

鳩山家の食事に見る「庶民感覚」の正体


【All About News Dig】連動エントリー
兄は「奥さんの手料理好き」で、弟は「無類の料理好き」。鳩山家のご兄弟はそんな風に言われます。弟の鳩山邦夫衆議院議員などは、5年ほど前、週刊誌に「朝からフォアグラや天ぷらを食べるようだ」と書かれてしまいました。この話題については、のちほど詳述しますが、そんな話が喧伝されるほど、セレブリティというか、美食家のイメージが強いわけでございます。

どうしてそんなイメージがついてしまったかというと、やっぱり生まれに育ち、そしてお家柄のせいでしょうか。おふたりの祖父君は、第52、53、54代内閣総理大臣の鳩山一郎氏。父君は外務大臣をつとめた鳩山威一郎氏で、ご母堂はブリジストンの創業者、石橋正二郎氏の娘である安子さん(旧姓:石橋)。昭和の政財界のトップリーダー家系───まぎれもない国内トップクラスのセレブリティです。

先日、安子さんがお亡くなりになった際に流れたニュースの見出しもケタ違いのスケールでした。
「鳩山家ゴッドマザー安子さん死去! 生前に由起夫・邦夫兄弟に42億円ずつ贈与?」
http://www.j-cast.com/tv/2013/02/12164828.html?p=all

42億円という巨額の数字がメディアの見出しに走ると、ついついその数字ばかりを追いかけたくなるのがメディアや庶民の性。そしてわかりやすい比較軸として、その食生活にも注目が集まります。

首相時代の麻生太郎氏はホテルのバー通いで批判されましたし、同じく首相時代の鳩山由紀夫氏も、毎晩客単価1万5000円~数万円ほどのお店で夕食をとっていたことで、一部から非難を浴びました。たまに「龍圓」(西浅草)などの比較的リーズナブルなお店に行ったかと思えば、お相手は当時内閣参与だった劇作家の平田オリザ氏だったりするわけで、このあたりは平田氏の大衆芸能センスの面目躍如というところでしょうか。

ちなみにリアル庶民の食卓の数字ですが、総務省の調査では、2011年の2人以上の世帯における1ヶ月の食費は6万6904円(うち外食費が1万1038円)。2011年の平均世帯人員が2.58人ですから、1人あたりの食費は月額2万5931円。1日あたりに換算すると864円、夕食分となると恐らく400円くらいでしょうか。幅はあるものの、だいたい由紀夫サンの50分の1くらい。

一方で一人あたりの相続額では、過去に「一人あたりの平均相続額は3172万7000円」という調査がありました。鳩山家の場合、生前贈与の42億円を除いても、さらに土地家屋など含め、数百億円単位と言われ、トータルで一人あたり軽く100億円以上はあるのではと推測されています。つまり最低でも、平均の300倍以上の相続額が発生していると思われ、そう考えると庶民の50倍程度に晩飯代を抑えていたのを「庶民感覚」と仰ったり、客単価数万円の割烹を「居酒屋」と呼んだとか呼ばなかったとかいう都市伝説も納得できそうな気がしてしまうわけでございます。

ちなみに冒頭の「朝からフォアグラ」エピソード。本当は邦夫サン、朝からどころかフォアグラ自体、召し上がらないようで、件の記事が掲載された後、「フォアグラは体に悪いし、絶対食べない」、「体つきから想像するのは構わないが、まったく根も葉もない」とは言ったものの、朝に摘んだばかりのセリの天ぷらを食べることはあるのだそう。

セリは根から葉までおいしい天ぷらになる食材ということで、フォアグラはともかく天ぷらには「根」も「葉」はあるようで……という、まるで週刊誌かのようなベタなオチが、あまりにも心苦しく、読者のみなさまに対してあれこれお詫びを申し上げたくなる心持ちでございます。

2013年2月15日金曜日

貧困は肥満につながる!?



「先週、公務員の給与を支払った時点で、 国庫金の残高は217ドルになった。政府の財政は現在、麻痺状態にある」 と、129日、アフリカのジンバブエのテンダイ・ビティ財務相が語ったというニュース(http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2013/01/post-2832.php
 )が世界を駆け巡りました。

ジンバブエの人口1250万人を約2万円でまかなう……。まるで、日本国民全員を20万円でまかなうようなものでございます。

しかし貧困と飢餓の問題はとても複雑です。アメリカではハンバーガーなどのジャンクフードを主食とする貧困層に肥満が多いと言われています。日本でも、昨年発表された国民健康・栄養調査の結果では、年収600万円以上の女性の肥満率が13%。対して、年収200万円未満になると女性の肥満率が25%に増えています。

生命維持にもつながるカロリーの高い炭水化物と脂質は、本能的に体が求めるようにできています。こってりしたラーメンをおいしく感じるのが、その最たる例です。しかも炭水化物と脂質は、野菜などの繊維質やタンパク質よりも、重量あたりのコストが安い。ポテトチップやハンバーガーなどのジャンクフードほどグラムあたりのカロリーは高くなりがちなので、貧困層のほうが太りやすくなるというわけです。

ちなみにアフリカでは女性はふくよかなほうがモテる地域もあるので、太っているからといって貧しいとも限りませんが、貧困が肥満につながるのは世界共通のようです。

ドラえもんとオレンジジュースと教育理念


【All About News Dig】連動エントリー
麻布学園(中学)の理科の入試問題がネットで話題(http://mamapicks.jp/archives/52103298.html)になっている……と思ったら、記事の切り口の面白さで定評のある東京新聞さんにも、取り上げられました。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013021202000055.html

話題になった設問は「ドラえもんが生物として認められることがない理由を答えよ」というもの。問題文中に「生物の要件」を記してあるので、そこから引用すれば正答になるという考え方が多いようです。

この設問自体が良問かはさておき、問題文全体で「生物とはどういうものか」について、ひとつの考え方を示し、受験生に一定の知見を持って帰ってもらおうという意図がありそうです。

調べてみると、2012年の問題の前提となる文章にも以下のような文章がありました。
「市販されているジュースにはストレートジュースと濃縮還元ジュースがあります。ストレートジュースとは、果汁を殺菌処理して、そのまま販売されるものです。一方で、濃縮還元ジュースとは、いったん濃縮(果汁に含まれる水分を減らす)したのちに、還元(再び水分を加える)してから販売されるものです」

この文章に続く、設問も「濃縮還元のほうが販売価格が低いのは、輸送や冷却にかかる費用が下がるからですが、その理由を答えなさい」とか「還元するとき、わずかな量であれば、味や香りをととのえるため、糖分や香料を加えたり、保存性を高めるために保存料を加えることも認められている」などなど、「ジュースの仕組み」について、一定の知見が受験したからこそ得られるようになっています。

合否という結果に関わらず、受験生はこの問題をきっかけに食品製造や流通に興味を持つようになるかもしれません。東京新聞の記事中にも学校側の「学校として問題の解答や意図の解説は一切しません。暗記内容を問うのではなく、考えさせる出題は毎年しています。今回もその一環です」というコメントが紹介されていますが、問題のなかにも「教育」に対する熱意と理念が伺えます。

そんななかに「ドラえもん」などメディアで話題になりそうなネタをさりげなく織り込むしたたかさなどを見るにつけ、こういう学校がもっと増えたら、世の中はもっと楽しくなるのになあと思わずにはいられません。なんだかメディアの話みたいですけど。

2013年2月14日木曜日

携帯ショップと禁煙外来

スマートフォン(高機能携帯電話)の普及の陰で、 「ガラケー(ガラパゴス携帯)」と呼ばれる従来型の携帯電話機が、 根強い人気を保っているという記事が不思議で仕方がありません。

何が不思議かというと、最近の携帯は軽く数万円は飛んでいってしまうお高い物じゃないですか。「0円ケータイ」の時代とは違うわけです。購入環境が変わって、ずいぶん経つのにいまだに「0円ケータイ」時代と同様に買い換えてしまう。

習慣とは恐ろしいものです。パソコンやテレビは何年も買い替えなくても、ケータイなら2年で買い換えるクセがついてしまっている。

操作性に不安があるなら、店頭のホットモックで確認すればいい。わからないことは携帯ショップのカウンターで店員さんを質問攻めにしていいでしょう。その上でガラケーに戻す可能性がありそうなら機種変更しなければいい。何かの事情で、どうしてもスマホに移行しなければならないのなら、血と涙と汗と根性でなじむしかないのですし……。

友人の男性はもう5年以上、同じガラケーを使っています。しかも間違いなく「0円ケータイ」として手に入れたであろう、ピンクのガラケー。全体にもう塗装はボロボロで、揚げ句に紛失した裏ブタの代わりに、布テープでバッテリーを固定している。まあこれはやりすぎだとしても、よほど幼稚なコミュニティでもない限り、「最新のケータイを持っていないから、仲間はずれ」だなんてことはないでしょう。万が一、そんなことがあったとしたら、とっととそんなコミュニティから足抜けしていいと思われます。

記事中にあった「スマホに移行してから、ガラケーに逆戻り」という例でもそうですが、どうもダイエットや禁煙に失敗する人のパターンと似ている気がします。例えばダイエットなら、「ヤセたい」と口にしながら、甘いモノを食べてしまう人。いつもおやつにカステラを食べていたけど、ケーキに変えたら太ったから、またカステラに戻したという感じでしょうか。ヤセる必要があるなら、カステラだろうがしばらくおやつをやめればいい。難しければダイエット外来に通うなど、他にも手はあるはずです。

タバコも同じです。一度は禁煙したのに、その後なんだかんだ理由をつけては吸うようになり、終いには自分でタバコを買うようになってしまって、「やめなきゃいけないんだけどねえ」とぼやく。本気で「やめなきゃ」と考えるのなら、禁煙外来でもどこでも行けばいってチャンピックスでも処方してもらえばいい。吸うなら吸うで、他人の目と健康を省みず、ルールとマナーの範囲内で吸えばいい。なのに、「やめなきゃ」と口走ってしまう。本気なら、他人の手を借りてでもやめればいいじゃないですか──。ええっと、すみません。僕のことですね。

習慣を変えたり、そのために他人の手を借りるというのは、慣れていない人にはおっくうなことかもしれませんが、決して安くはない携帯電話料金を払っているのですから、ケータイショップを使い倒せばいいと思います。僕ももう一度本気でタバコをやめようと思い立ったら、禁煙外来のドアを叩いてみるつもりです。どうか口だけに終わりませんように。そう自分に言い聞かせながら、ちょっといまから換気扇の下に行ってきます。

2013年2月11日月曜日

おたくとOtakuと道楽と夏目漱石

【All About News Dig】連動エントリー
20~40代男性の過半数、「自分はオタクだと思う」
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1301/23/news068.html
各研究所がその規模を調査するなど、消費不況の中で注目されているオタク市場。20~40代の男性のうち、過半数は自分がオタクだと認識しているようだ。ハピネット調べ。

*****

「エッー!?」

以前からネットなどで「国民総オタク化」などの文言を目にはしていましたが、この見出しにはあれこれビックリしたので、まずは気を落ち着けるために「オタク」を辞書でひいてみました。

辞書に見る「おたく」とその語源
「俗に,特定の分野・物事を好み,関連品または関連情報の収集を積極的に行う人。狭義には,アニメーション・テレビ-ゲーム・アイドルなどのような,やや虚構性の高い世界観を好む人をさす。 「漫画 ─ 」 〔  は多く「オタク」と書き,代名詞としてこの語を使う人が多いことからの命名という。1980年代中ごろから使われる語〕」(大辞林第三版/三省堂)

大辞林上で「おたく」に上記の意味が付与されたのは、1995年発行の第二版からだと言われています。この2年前に三省堂から発行された「辞林21」での「おたく」にこの意味は掲載されていません。ちなみに大辞林さんは「萌え」なども採用している、先進的な辞書ですが、一部で「大辞林に載っている」と話題になった「ぼっち」「ツンデレ」などは、まだWeb版やアプリ版のみで、紙の辞書には採用されていません。紙の辞書に採用されるには、(意味が定着したとみなされるまで)一定の期間が必要です。

脱線してしまいました。僕が今回の調査で気になったのは「おたく」という言葉を調査対象の方々がどう捉えたか。少し前(2005年)に、「おたく」という言葉の成り立ちを、編集家の竹熊健太郎さんがブログにまとめてらっしゃいました。超ざくっと紹介させていただくと1983年、コラムニストの中森明夫さんが「おたく」を揶揄するような調子でフレーム化した概念が、1989年に起きた幼女誘拐連続殺人事件の容疑者の属性を指す言葉としてメディアに浮上したというものです。
※1983年以前から近いニュアンスで使われていたという話もありますが、詳しくは以下、竹熊さんのエントリーからどうぞ。
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/03/post_10.html
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/03/post_11.html

「おたく」概念の変化
メディアから光を当てられた「おたく」という概念は、その後「自己評価」←→「他者からの見方」が明確に切り分けられていきました。情報を深堀りし、知見を突き詰めようとする「おたく」自身が考える「あるべき姿」と、メディアを中心とした「世間」からの見方──ネガティブ感を伴うレッテルです。1990年代前半には、両者の間には互いを意識しつつも明確な境界が存在していましたが、1990年代半ば以降その境界が溶けていったというか、互いが互いの概念に明確に干渉するようになっていった。このあたりの流れについては、社会学者の宮台真司さんが折りにふれ著書などで言及していらっしゃいます。
http://www.miyadai.com/index.php?itemid=416

海外でも「Otaku」という言葉が定着するようになった2000年代には、さらなるニュアンスの変化が現れます。時代の変化に伴い「おたく」「オタク」「ヲタク」という呼称からは、ポジティブな香りまで漂いはじめました。もはや「御宅」ではなく、社会/世界での立ち位置までも獲得した「おたく/Otaku」という呼称は、今後、何を指す言葉になっていくのでしょうか。「Tokyo Otaku Mode」(https://www.facebook.com/tokyootakumode )の快進撃を見るにつけ、「おたく/Otaku」から目が離せなくなります。

夏目漱石の解釈する「道楽」は「おたく」なのか。
1992年頃、友人との雑談の席で「●●オタクとか☓☓マニアって呼び方は、語感が楽しくないから『道楽』って言い換えようぜ」という話題になったことがあります。当時は「おお! 『道楽』なら楽しそうだ」と軽はずみに思ったりもしましたが、その後夏目漱石の「道楽と職業」を読んで、愕然としました。

「禅僧の修行などと云うものも極端な自然本位の道楽生活であります。(中略)すべてをなげうって坐禅の工夫をします」

うわぁ……。これじゃ「道楽」も常人には難しい。しかもそもそも仏教用語で「道楽(どうぎょう)」は、仏道を求めるという意味なんだとか。確かにテレビなどで拝見するコアな「アイドルおたく」の言動などは、「すべてをなげうって」いるようにも……。ともあれ「道楽」も「おたく」も、そもそもの用法では常人には到達し得ない高みのようです。
http://www.otani.ac.jp/yomu_page/b_yougo/nab3mq0000000qyf.html

現代における「おたく」の一般的解釈って?
というわけで、冒頭の「あなたは自分をヲタクだと思いますか」という設問。自分自身を振り返ってみると、マンガは好きですが、単なるマンガ好きだと思っているので、「ヲタクではないと思う」を選択させていただこうと思います。全体の45.7%という少数派なのは寂しいところですが。

ところでこの調査のプレスリリース原文での「おたく」の定義は「※おたく(オタク、ヲタク)とは、サブカルチャーファンの総称。元来、アニメファンを指す呼称が、現在、広い領域のファンを表すため、アニメファンは「アニメヲタク」(アニヲタ)と一般的に呼称されている。」となっていました。

あれ? 単に「ファン」だと解釈するなら僕も「おたく」ということに……。他意のない素朴な疑問ですが、いま一般的に言う「おたく」とはこういう解釈なんでしょうか。

2013年2月7日木曜日

1900万円のうますぎる? 経済効果


【All About News Dig】連動エントリー
香川県の「うどん県」や、広島県の「おしい!」キャンペーンに引き続き、衝撃の施策を岡山市が展開しています。

「桃太郎市、実は「伝説の岡山市」 市長が改名宣言種明かし」
http://www.sanyo.oni.co.jp/news_s/news/d/2013020114043974

ざっと概略をさらうと、岡山市が1月29日に「『おしい! 桃太郎市』に改名する」と市長が宣言する記者会見動画やしょぼいウェブサイト(http://den-oka.jp/teaser/ )を公開。しかしこれらは実は前フリとしてのネタで、岡山市は2月1日に「市長が鬼にあやつられていた」と撤回し、「伝説の岡山市」という本当のキャンペーンをスタートさせました。捨て身とも言えるキャンペーンに五体投地というか身投げ状態の市長に男惚れしそうです。

予告編のプロモーションビデオ(PV)の主演俳優に地元出身の甲本雅裕を起用し、そのBGMには実兄の甲本ヒロト率いる、THE HIGH-LOWSの「日曜日よりの使者」。本編のPVシリーズは現在も更新され続け、地元の名産品や伝統行事などを「知られざる伝説」としてプロモーションしていく模様です。

https://www.youtube.com/watch?v=mj9CtE65Edo

一部で「だまし」とも言われた、事前の記者会見PVにも市長自らが出演したことで、大手メディアがこぞってとりあげ、「マス」パワーが効果を発揮。「伝説の岡山市」公式Web(http://den-oka.jp/ )のFacebookの「いいね」は2万を超え、URL入りのツイート数も4000を超えました。ネット上は「ヤバイ!」「おもしろすぎる!」など絶賛の嵐。

といっても、一部では「おしい! 岡山自体を認知させるプロモーションとしては成功しているが、最終目的がわからない。財政が苦しいのだからこの予算で名物を作って、知名度を上げて集客につなげるべきだった」などいろいろな意見があるようです。

確かに、動画の「伝説FILE第二弾~岡山市は(自称)日本一暮らしやすい街である。」内に登場する「サワラ」などはもう少ししっかり紹介するといいのになあとは思います。以前、料理マンガの『美味しんぼ』でも紹介されていたように、サワラは足が早く、岡山以外では刺身でいただくのはなかなか難しい。だから岡山に来て、食べてみて。というような話も盛り込みたい気持ちはよくわかります。

しかし、このPRにまつわる事業費は1900万円。この予算内でタレントをブッキングしたPVを作り、プロモーション展開を行い、新幹線の停車駅である品川駅構内でもCMを流しています。マスメディアにもしっかり取り上げられ、広告業界でよく使われる「メディア露出」の広告費換算で言うと、既に十分モトは取ったと思われます。最初の反応が良すぎたからか、事前にUPするのが自然なはずの「予告編」の第三弾がUPされていないという謎も残されていますが。

それにしても、なぜ県ではなく財政の苦しい市がやったのかと、最初はクビをひねってしまいましたが、そういえば岡山県は結構な赤字を誇る自治体でした。
http://www.rnc.co.jp/news/index.asp?mode=1&nwnbr=2013020410

自治体におけるこの手のプロモーションは、担当者や首長が超ノリノリでなければ実現しません。仮に「やろう!」となってもその裏側にある面倒くささは推して知るべしで、例えば今回の企画でも事前に香川県や広島県に話を通していた模様です。岡山市さんには「素敵な企画を楽しませていただいてありがとうございます」と申し上げたい気持ちでいっぱいです。

ちなみに僕自身、お世辞抜きで岡山のごはんは大変おいしいと思います。数年前、田んぼの中にぽつんと佇む天ぷら屋の天ぷらや駅弁の「あなごめし」などもとてもおいしかった。しかし地元の人が日常で食べている、本当においしいものはまだまだあるはずです。

2011年のB-1グランプリを制した蒜山(ひるぜん)焼きそばもおいしいとは思いますが、いわゆる「B級グルメ」でなくてもいいでしょう。できれば、サワラやママカリのような日常で長く愛されたものにさらなる光を当てていただくと、次に伺ったときにまたまたうまいものにありつけそうな気がするわけで、市/県の垣根を問わず、岡山のみなさまどうぞよろしくお願い申し上げます。

2013年2月6日水曜日

桜と餃子、春の明暗

【All About News Dig】連動エントリー

暦の上では春でございます。そんな折り、こんなニュースが静岡新聞に載りました。

「咲いてないから開花促進剤散布、地元に賛否両論 河津ザクラ」
http://www.at-s.com/news/detail/474561923.html

静岡県河津町で2月5日から3月10日まで行われる河津桜祭りは例年100万人の観光客が訪れる同町の一大イベント。ところが、例年2月に咲く桜が、今年は寒波で開花時期が遅れる見込みとなり、昨年秋、町は開花促進剤を散布しました。そのことに対して町民からさまざまな意見が噴出したそうです。

A.「観光客に来てもらったのに花がなくては説明が付かない」(66歳・タクシー運転手・♂)
B.「観光客は気の毒だが、自然が相手。自然に手を加えることは観光客を結果的にだますことになる」(73歳・町民・♂)
C.「昨春の開花の遅れで、観光業者から散布を望む声が強まった」(河津町産業振興課の担当者)

わかりにくいので勝手に意訳させていただくと、それぞれ「観光資源がないと、稼ぎにならない」、「自然に手を加えるとはけしからん」、「まちおこしに差し支えるので、散布を決定しました」というところでしょうか。

では肝心の客はどう思っているかというと、記事中に新潟県からの旅行客(75歳)の「早春に咲くから珍しがって来る。散布しなくても観光客は来るのでは」という声もありました。もっとも、昨年開花が遅れたところ、前年100万人だった観光客が70万人に減ったという、町にとっては頭のイタイ話もあります。

今回の記事にあった話を基準とすると、町民のスタンスはおおきく以下のふたつにわかれると思われます。
1.「桜の咲き加減よりも、河津の自然を守りながらありのままを楽しんでもらおう」
2.「毎年必ず、祭りの時期には咲き誇る桜を楽しんでもらおう」

自然が相手となるとそうそう人間の思うようにはいかないようですが、観光資源である以上、なんとかならないものかと考える人も当然いるわけです。他方で全国に目を向けると、動かしようのない事実を受け入れながらのプロモーションを展開する町もあります。例えば昨年、「餃子の町」で知られる宇都宮が展開した「宇都宮餃子日本一奪還計画」もそう。昨年、ニュースサイトにこんな記事を書きました。

「浜松に「餃子日本一」奪われた宇都宮が剥き出しにする危機感」
http://www.news-postseven.com/archives/20120718_128707.html
2011年、世帯当たり購入額で静岡県浜松市に日本一の座を明け渡し、危機感を募らせた宇都宮市が凄まじい餃子キャンペーンを繰り広げたという記事です。自虐ネタを随所に盛り込んだキャンペーンサイトはネット上でも話題に。そしてつい数日前、2012年の結果が出ました。


http://www.shimotsuke.co.jp/select/ugno1/

2位でした。町おこしを狙う以上、誰もが「2位よりは1位のほうがいい」。にも関わらず、2位というくやしい結果を堂々と発表する宇都宮の潔い姿勢に好感を抱いてしまい、思わず宇都宮の名店「正嗣」の餃子を取り寄せそうになったほどです。

河津の桜だって、毎年異なる風情を楽しむのも悪くない気がします。仮に散布剤が効いたとしても、雨が降れば人出は少なくなるでしょうし、開花時期を100%コントロールするのは無理でしょう。確かに咲いているほうがいいのかもしれませんが、お花見というものは毎年直前まで決まらないのが当たり前……という理屈は、お客様という神様には通じないのかもしれません。

と思ったところで、静岡新聞の記事にこんな意見がつけ加えてありました。

公益財団法人「日本花の会」の和田博幸主任研究員の話
河津町には河津ザクラよりも早咲きの「河津正月ザクラ」という種類があると聞く。河津ザクラと同じ系統なため、町がこのサクラの栽培を行えば、「シアナミド液剤」は使わなくて済むのでは。開花促進剤を散布したサクラは大きさや色の面で十分な咲き方をしない場合もある。

ちなみに今年の開花予想は2月中旬。見頃は下旬となるそうです。
http://www.47news.jp/news/2013/02/post_20130205205009.html