2013年2月6日水曜日

桜と餃子、春の明暗

【All About News Dig】連動エントリー

暦の上では春でございます。そんな折り、こんなニュースが静岡新聞に載りました。

「咲いてないから開花促進剤散布、地元に賛否両論 河津ザクラ」
http://www.at-s.com/news/detail/474561923.html

静岡県河津町で2月5日から3月10日まで行われる河津桜祭りは例年100万人の観光客が訪れる同町の一大イベント。ところが、例年2月に咲く桜が、今年は寒波で開花時期が遅れる見込みとなり、昨年秋、町は開花促進剤を散布しました。そのことに対して町民からさまざまな意見が噴出したそうです。

A.「観光客に来てもらったのに花がなくては説明が付かない」(66歳・タクシー運転手・♂)
B.「観光客は気の毒だが、自然が相手。自然に手を加えることは観光客を結果的にだますことになる」(73歳・町民・♂)
C.「昨春の開花の遅れで、観光業者から散布を望む声が強まった」(河津町産業振興課の担当者)

わかりにくいので勝手に意訳させていただくと、それぞれ「観光資源がないと、稼ぎにならない」、「自然に手を加えるとはけしからん」、「まちおこしに差し支えるので、散布を決定しました」というところでしょうか。

では肝心の客はどう思っているかというと、記事中に新潟県からの旅行客(75歳)の「早春に咲くから珍しがって来る。散布しなくても観光客は来るのでは」という声もありました。もっとも、昨年開花が遅れたところ、前年100万人だった観光客が70万人に減ったという、町にとっては頭のイタイ話もあります。

今回の記事にあった話を基準とすると、町民のスタンスはおおきく以下のふたつにわかれると思われます。
1.「桜の咲き加減よりも、河津の自然を守りながらありのままを楽しんでもらおう」
2.「毎年必ず、祭りの時期には咲き誇る桜を楽しんでもらおう」

自然が相手となるとそうそう人間の思うようにはいかないようですが、観光資源である以上、なんとかならないものかと考える人も当然いるわけです。他方で全国に目を向けると、動かしようのない事実を受け入れながらのプロモーションを展開する町もあります。例えば昨年、「餃子の町」で知られる宇都宮が展開した「宇都宮餃子日本一奪還計画」もそう。昨年、ニュースサイトにこんな記事を書きました。

「浜松に「餃子日本一」奪われた宇都宮が剥き出しにする危機感」
http://www.news-postseven.com/archives/20120718_128707.html
2011年、世帯当たり購入額で静岡県浜松市に日本一の座を明け渡し、危機感を募らせた宇都宮市が凄まじい餃子キャンペーンを繰り広げたという記事です。自虐ネタを随所に盛り込んだキャンペーンサイトはネット上でも話題に。そしてつい数日前、2012年の結果が出ました。


http://www.shimotsuke.co.jp/select/ugno1/

2位でした。町おこしを狙う以上、誰もが「2位よりは1位のほうがいい」。にも関わらず、2位というくやしい結果を堂々と発表する宇都宮の潔い姿勢に好感を抱いてしまい、思わず宇都宮の名店「正嗣」の餃子を取り寄せそうになったほどです。

河津の桜だって、毎年異なる風情を楽しむのも悪くない気がします。仮に散布剤が効いたとしても、雨が降れば人出は少なくなるでしょうし、開花時期を100%コントロールするのは無理でしょう。確かに咲いているほうがいいのかもしれませんが、お花見というものは毎年直前まで決まらないのが当たり前……という理屈は、お客様という神様には通じないのかもしれません。

と思ったところで、静岡新聞の記事にこんな意見がつけ加えてありました。

公益財団法人「日本花の会」の和田博幸主任研究員の話
河津町には河津ザクラよりも早咲きの「河津正月ザクラ」という種類があると聞く。河津ザクラと同じ系統なため、町がこのサクラの栽培を行えば、「シアナミド液剤」は使わなくて済むのでは。開花促進剤を散布したサクラは大きさや色の面で十分な咲き方をしない場合もある。

ちなみに今年の開花予想は2月中旬。見頃は下旬となるそうです。
http://www.47news.jp/news/2013/02/post_20130205205009.html

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