2013年1月16日水曜日

おトイレごはんな若者(前編/前フリ)

【All About News Dig】連動エントリー

独りぼっちが怖い・・・トイレで食事 レンタルフレンド
http://www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/kansai1357295244936_02/news/20130107-OYT8T00095.htm

この記事を見て、Webにいらっしゃる論客の方々からのツッコミが心配になり、「うーん」と360℃ほど、クビをひねってしまいました。ありそうなツッコミとしては大きくふたつ。ひとつは調査結果からの強引……もとい、筋力任せの記事化。もうひとつは本当に「トイレで食事」を選択してしまうほど、繊細になってしまった一部の若者と、その対人関係でございます。

まずはひとつめの「筋力任せの記事化」について。新聞・雑誌、Webメディアといったチャネル問わず、こうした結論ありきの記事化は、あらゆるメディアでしょっちゅう行われていますし、作為・不作為を問わず、僕もその片棒を担いでしまうことがございます。つまり本稿は天にツバ吐く、天唾エントリーにだと誤解をされかねませんが、あくまで「Web住民の方から、こんなツッコミが入ったら大変!」という老婆心エントリーでございます。

さて本来、メディアはその大小やテイストに関わらず、一定の信頼を得るように作られて然るべきです。とりわけ新聞というメディアは、雑誌よりも全面的に読者に盲信……ではなく、全幅の信頼をされる傾向にございます。「どうせ週刊誌だから飛ばしだろう」と揶揄されることはあっても、「どうせ全国紙だから飛ばしだろう」と言われることはあまりないわけで、少なくとも発信側はそれ相応の責任が発生すると自覚されるのが自然なことだと思われます。

そこでこの記事の構成を見てみましょう。
1.大学入学前の学生向けに、大学主催での「顔合わせ会」が行われている。

2.「友達ができないからという理由で、休学・退学してしまう学生もいるので」という同大学准教授のコメント

3.この10年で大学の休学者は過去最高の3万1000人に上り、10年で1万人近く増。
4.休学理由は意欲減退などの「消極的理由」がもっとも多い
5.コミュニケーション不全が理由で不登校になった学生の例。おトイレでごはんを食べていた
6.別の識者による、大学不登校者の8割が高校までは普通に登校との簡単なデータ紹介。続けて「今の学生はサークルや部活にかつてほど参加していない。友達作りで最初につまずくと、ずっと孤立してしまう」とのコメント。

ツッコミどころを多彩に用意した、Web時代にふさわしい、素晴らしいメディア・コミュニケーションといえるでしょう。導入の1はともかく、2は「休学・退学者を出さないために、ワークショップが行われている」という印象に誘導しています。果たして、この准教授はこうした文脈で仰ったのでしょうか。

3の休学者数・率は事実としても、前項で触れられていた「退学者」については、この項からスルーされています。数字を見ると退学者は、休学者ほどの増加率ではありません。きっと記事構成上、仕方がないのでしょう。

4についても、上記報告のなかには、「消極的理由」の定義があります。「「積極」「消極」とは、本人の主観とは関係なく大学教育路線上に残るか離れるかの意味である」と。しかし、記事中にそうした説明は一切ありません。

ちなみに5.のようなマインドの学生は20年前の大学生にもいました。僕だって似たようなもので、おトイレでごはんこそ食べませんでしたが、自分の大学にもまあ適当に話せる知人はいたものの、本気で好きな音楽や料理、本、コミュニケーションの話をできる友人はいませんでした。いつも、テレビ番組やタレントの話で終始してしまう。なんだよ、こいつらくだらねえと思い始めると、何もかもがつまらない(まあ、自分がつまらない人間だったわけですが)。おまけに講義も面白くないので、早晩、在籍する学校に興味がなくなり、籍もないのに友人が通う大学にせっせと朝から通うようになりました。そうして数年後、自分の大学からドロップアウトというか、入学取り消しを食らうわけです。まさに「消極的理由」以外の何物でもありませんが、いまもなんとか仕事はできています。

おっと、これは関係ない話でした。6にしても、大学不登校者でも、高校時代であればそのうち8割くらいは登校していたでしょう。だって大学生の多くは高校を卒業している人でしょうから。その後の「最初につまづくと、ずっと孤立してしまう」のもそりゃそうだという、誰もが納得の一般論でございます。

Web住民からのツッコミを妄想するだけでこんなに長くなってしまいました。もちろん書き手の方にそんなつもりはないのでしょうが、この展開では「この程度で読者は納得するだろう」などと読者様のリテラシーをたいへんナメているように見られかねません。大変僭越ですが、遠巻きで、他人事で、上から目線という、頭の頭痛が痛くて、危うい危険が危ない記事のように受け取られないか、不安が心配で夜もうまく眠れません。

さて、長くなりました。「おトイレごはんな若者」については、後編に続きます。

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