2012年10月14日日曜日

新刊「家呑み道場」とチームとしての給食系男子

新刊の『家呑み道場』(http://www.amazon.co.jp/dp/4799312332/ )が昨日書店さんに並びました。前作の『家メシ道場』(http://www.amazon.co.jp/dp/4799311549/ )もそうでしたが、何冊作っても、書店さんに本が並ぶというのは、本当に涙が出るほどうれしいものですが、ユニットで作るというのもまた格別でございます。

年間の書籍の発行点数というのは、ご承知の通りここ数年は横ばい、もしくは減少傾向にあります(http://www.garbagenews.net/archives/1885419.html
)。それも横浜FCのカズのように、年齢からくる体力の限界に挑むようなカッコいいものではなく、BI砲がリングを去った後のプロレス界のような「何をどうしたら」という閉塞的な雰囲気にあふれているわけでございます。新人の著者でなくとも、書籍の企画は通りにくくなりました。「面白いけど、確実に売れるの?」と言われることが増えました。そんななか、何の後ろ盾もない無名の新人ユニットの1050円の本が、バンバン刷られて書店に平積みになるということ自体、奇跡的です。

メディアがどこまで閉塞感にさいなまれているかというと、例えば「紙」の世界でば、「雑誌」というカンバンの存在感が薄くなり、ネット上に無料の情報があふれ、いわゆるゆとり世代ユーザーからは有料メディアと無料のWebの情報の価値や信頼度が等しくみなされてしまうようになり、無料メディアにユーザーを食い取られた有料メディアは必要な予算も削減され、結果当然のように情報の質が劣化し、一部で本当に有料と無料の情報の差がなくなったり、ごく一部では有料メディアと無料メディアのクオリティの逆転が起きたり、そもそもの情報の価値とはなんぞや的な話がぐるぐる状態。似たようなことはほぼすべてのメディアで起きております。

情報価値の乱高下が起き、ノマドサイコーとかなんだかよくわからない風潮が流行ったりするわけですが、10年以上前にノマド的スタイルで仕事をやっていた人なんていくらでもおりました。FAXメールがない当時にはコンビニでクロネコFAXの送受信を行ったり、週刊誌の担当者に「いちいち宅配便送るとき、宛先確認しなきゃいけないの面倒だから、固定の住所を持て」と露骨にイヤな顔をされたり、揚げ句に当時従量課金制だったPHSでつなぎっぱなしで寝落ち連発して、ドコモ先生から10万円単位の明細書を頂いて頭を抱えたり、某週刊プレイボーイに「ネットカフェなら暮らせるぜ」的企画を出したところ、「そんなことやってるのマツーラくんだけだよ」と一蹴されるという、もう涙なしでは語れない足軽時代の記憶が甦ったりするわけですね。ああ、お恥ずかしい。

例によって激しく話が逸れました。話を元に戻すと、まともな情報を提供しようとするとコストがかかるのは当たり前の話で、作ろうとするとカネか人か時間か何らかのコストがかかり、技術が必要わけです。ところがいまはコストをかけたものづくりがむずかしい。人や時間や技術を何とかしようとしても、結局カネがかかるのは企業のM&A戦略を見ても明らかなわけです。そうこうしているうちに技術を持っている人が現場からいなくなっってコンテンツ崩壊、と。なんだか元切込隊長風の話になってきましたが、あくまで『家呑み道場』の話だということを忘れてはいけません。

必ずしも流行るとは限りませんが、結果を見るとまっとうなもののほうが一定の成果を上げやすい。そのまっとうなものを作るには、技術も含めたコストがかかる。「給食系男子」という趣味のユニットが、ちょっとだけ世の中に出ることができたとすれば、本来かなりのコストがかかるノウハウや知見、愛情を「趣味」だからと本に惜しみなく注入したこと。『家メシ道場』のとき、ディスカヴァーさんから頂いた企画も本当に僕らに合っていたし、当初メンバーが引くほど刷ってくださったのも、僕らのような無名のユニットにはとてもありがたいことでした。

ひとりずつでは、当然料理のプロにもレシピのプロにもかなわない。でも、料理は好きだし、メンバーには実家が農業を営んでいたり、仕事で「食」に関わる人もいる。「食」に関する知見は、人数がいてフィールドが違うからこそ、積み重ねられるものがあるわけです。

本づくりという面では編プロである弊社のエースが僕をこきつかったりしながら、知恵を絞って愛情を注ぎ込めば、何とかなる。いわゆる「プロ」との差別化や、新しいレシピの開発につながるような、調理の科学的な資料も趣味で集めていたし、それこそ周辺にはレシピのプロもいる。おまけに読者にどう届けるかというコミュニケーションに知見のある人も周囲にいて、六合さんを筆頭にソーシャル展開が上手な人もいれば、五合さんのようにアナログコミュニケーションも上手い人も。そのほか九合さんのように流通の見地からアイディアを出せるメンバーもいます。

実際、メンバー構成のバランスの良さはいろんな形で伺えて、話を詰めるときのようにピリピリムードになりそうなとき、場を丸めてくれる四合さんがいて、誰もモノを言えなさそうな重苦しい空気になりそうなとき、口火を切ってくれる十合さんもいる。毎月イベントができる「場」を作ってくれる一合さんがいて、イベントなどで料理の手に困ったら、預けられる八合さん、十合さん、壱壱合さん、十二合さんなどなどいろんな意味で精鋭ぞろい。さらにオッサンだけだと見た目がしんどいところ、ピチピチの若者一合半くんや十三合さんがなぜかいる。

そこに、食べ物に強固な愛情を持つ二合さんが「食べ物愛」を注入してくれて、「カンタンなものしか作れない……」と時折、自信なさそうにしている二升八合さんのおかげで、時に偉そうなレシピになりそうなところに歯止めがかかる。「惰性」になりそうなときには、新しいメンバーが参加して、またユニット自体が活性化するわけです。

それぞれの役割がまたがっていたり、多岐に渡っているので、「あれだけやったんだから」ときどきカン違いしそうになったりもします。メディア慣れしていない素人集団なので、時には調子に乗ったりもしてお恥ずかしい姿をお見せしたりすることもあります。こうした状況に慣れていないもので何卒ご容赦をお願いしつつ、掲載レシピをあれこれアレンジして楽しみながら作って頂けると、友達が増えたような気分になって、僕らはとてもうれしく思います。

新刊は、東京では比較的店頭に並んでいるようですが、郊外などでは書店にまだ並んでいないところもあるようです。お手元に届いていない方、申し訳ありません。日本では、一日あたり平均約200冊、年間7万冊以上の新刊が出版されていて、初版をビックリするほどたくさん刷って頂いたのに、なかなか「ほしい」という方に行き渡らないのが実情だったりします。

もし「ほしい!」という方は、どうぞ書店の店頭やお電話で「家呑み(家メシ)道場って本、ありますか?」お問い合わせください。すると僕らの目標である「売れたらみんなで温泉!」に、一歩近づけますもので、どうぞよろしくお願い申しあげます。

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