2013年3月12日火曜日

その「魂」は合っている?

【All About News Dig】連動エントリー
零細ではございますが、僕は小さな編集プロダクションを経営していたりして、社是というか、絶対に守らねばならない心得みたいなものを自分や社内に課しています。

「三方よし」。江戸時代に近江商人の商売の心得で「売り手よし、買い手よし、世間よし」を「三方」としたものです。商取引をしたときに、売り方、買い方、双方が喜んだ上で、世間も喜ぶような商売をしようという、心がけを言語化したものです。

実際の仕事のどこにどれくらい反映しているかと聞かれるたら、すべてに具体的に答えられるわけではないかもしれません。でも、迷ったときに原点に立ち返るきっかけや、万が一「三方よし」が実現できなかったとき、反省し、検証する土台の考え方にはなります。

ところで、先日「新入学生の親が選ぶ、(子どもに持たせたい)携帯キャリア」に関する調査結果を目にして、アゴが外れそうになってしまいました。見出しに「新入学生の親が選ぶキャリア、安心・安全・低料金でau……子どもが選ぶ端末は iPhone」とあったのはともかくとして、驚愕したのは「子どもに持たせたい機種でスマートフォンを選択した理由」です。


1位 子どもがスマートフォンをほしがっているから
2位 自分と一緒(同系統)の機種だから
3位 今後スマートフォン以外の携帯電話は時代遅れになるから
4位 インターネットが使いやすいから
5位 機能が豊富だから
6位 アプリやサービスが充実しているから
7位 親との連絡が取りやすいから
8位 スマートフォンを持っていないと時代についていけなくなるから
9位 持っている人が多くて安心だから
10位 勉強に役立ちそうだから

調査の前提として「携帯、それもスマホを買い与える」があるにしても、何のために携帯(スマホ)を買い与えるのか、まるで理由になっていません。もちろん選択肢に誘導された面はあるにしてもです。よく昔のドラマで「人様に迷惑をかける子にだけはなってくれるな」というセリフがあったような気がします。上記の調査からは買い与えることでどういう人間に育ってほしいか、まったく見えないのです。

強いて言えば、3位は「先進的な人間になってほしい」という意図があるような気がします。もっともスマホの機能ごとき、大学に入ってからでも楽勝で覚えられるでしょう。ほか、8位に関しては「友人とのコミュニケーション構築に必要だから」という理由であれば理解はできます。しかし学生が使いそうなほとんどのアプリはガラケーでもほぼカバーされています。

上のふたつについては「早いに越したことはない」と考えるのは理解できるにしても、他の選択肢はどういう理由で選んでいるのでしょうか……。2、4、5、6、7位あたりの上位は根本的な考え方が間違っているというか、親自身がスマホを含めた携帯電話の機能をよく理解していないような気が……。

上記調査で「機能性」を挙げる人がたくさん見受けられます。しかし、子どもにスマホを与えたら必ず遊びの道具として使います。「UI(ユーザーインターフェース)が直感的ですぐれている」と言われるiPhoneが子どもに人気なのも、すぐに遊びに使えるから。もし買い与えるなら、遊び道具と割りきって買い与えたほうが、後々親も子もお互いにダメージが少なくて済むのではないでしょうか。そもそも高い機能で何をさせたいのか、意味がわかりませぬ。

僕は主にガラケーを使っていて、サブで電話機能のある7インチタブレットをスマホ代わりに使っています。僕がスマホ(的なタブレット)も使う理由はただひとつ。メディアやアプリの制作に関わるとき、使ってみないとユーザビリティがわからず、動作確認ができなければ仕事にならないからです。

極論すれば、すべてのツールやサービスは、自分の将来のためになる材料を収拾するためにあると言ってもいい気がします。その判断が子どもにはできない(もしくは親を説得する言葉を持っていない)。そこで「買ってあげる理由」を親がわざわざ探さなくてもいいのではないでしょうか。でも、子どもがスマホを使うことによって、どんな人間に育ってほしいかという「理念」はあるんでしょうか。

仮にないにしても、「親である自分が自己満足のために買い与えたいから買うのだ」くらい言い切ってくれたほうがまだすっきりします。「子どもがほしがっているから」とか、子どもに責任を押しつけちゃうのは、いかがなもんでしょうか。

僕の大好きなマンガに「大東京トイボックス」(うめ)という作品があります。その第一巻に駆け出しの新人が持ち込んだダメダメな企画書に対して、主人公がなんとかホメどころを探すシーンが登場します。そこで主人公の天川太陽が言った言葉は……。

「魂は合ってる」

昭和で本当にすみません。でも、最後の最後、魂が合ってるかどうかはとても大切な気がします。昔のドラマでよく「人様に迷惑をかけるようなことだけはしないよう、躾けております」というような場面を目にしました。それもまた「魂」であり、教育理念の形でしょう。

何かアクションを起こすとき、「理念」とか「志」とか「魂」を見つめることが、何よりも大切なことなんじゃないか。そんな風に自分に言い聞かせて、本日のエントリーにかえさせていただこうと思うわけです。

大東京トイボックス 1 (バーズコミックス)

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